朝廷の院の側近くに仕える女房・桔梗局から、少年少女連続失踪事件の解決を命じられる検非違使・孝森祐宜と椿姫絢那のコンビは、行方不明になった絢那の友人・松川敦士の行方を捜す。
絢那囚わる
「あの女子大生が保護された住宅街の児童公園と、松川くんが行方不明になった運動公園の半径5キロメートル圏内に数日間人を監禁して置ける場所と言えば、調べた限りここしかないわ…!」
怪しい無人の廃工場を見つけた絢那は、狐の式神・楓子を召喚した。
「絢那、呼んだコン?」
「楓子、お願いがあるの。怪しい廃工場を見つけたから、先輩をここに案内して来て。私は一足先に中に潜入します」
「一人で行く気かコン? それは危ないコン!」
「大丈夫、決して無茶はしません。それよりも早く先輩を!」
「……分かったコン。でも本当に無茶はしないで待っててね、絢那!」
楓子は祐宜を迎えに行くため、走り去っていった。
「さてと――」
楓子が祐宜の元へと向かったのを見届けた絢那は、一人で慎重に廃工場の内部へと単身潜入する。そこで彼女が見たものとは、両手を手錠で拘束され、口には喋れないようにガムテープを貼られていた敦士の姿だった!
「んっ、んんーっ!!」
「松川くん、今助けます!―――キャアアッ!?」
敦士を助けようと側に近寄った瞬間、絢那は仕掛けられていた落とし穴に落ちてしまった。まんまと罠に嵌った絢那を上から蔑みと嘲笑の視線を浴びせるのは、白夜叉の伽羅である。
「フフフッ…バカな検非違使さんww」
敦士の素性
敦士を助けんと廃工場に単身で乗り込んだ絢那もまた、不覚にも捕まってしまった。しっかり口に猿轡を噛まされ、厳重に柱に縄で縛り付けられてしまった絢那。
「んんーっ!!んんんーっ!!」
「冥土の土産に教えてあげるからよく覚えておきな、検非違使のお嬢さん。アタシは大楠公お抱えの忍び集団・楠木党の中でも特に吉野のご老人様のお側近くにて代々御用を務める弥御影一族が上忍、白夜叉の伽羅とはアタシのことさ!」
「………!?」
吉野の老人――その名には検非違使である絢那にも聞き覚えがあった。西日本の政財界を背後から牛耳る正体不明のフィクサーが存在するとの噂は以前から朝廷内でもまことしやかに囁かれていたが、あくまで都市伝説レベルの存在だった。まさかその吉野の老人が実在したとは…!? すると今回の少年少女連続失踪事件の黒幕は、その吉野の老人…?
「兵庫介様の話では、お前にはまだ利用価値があるんだとさ。それまで生かしておいてやるから、しばらくここで大人しくしてるんだね」
一方、別室では、風祭兵庫介が敦士の口からガムテープを剥いでいた。
「痛てッ!!」
「ご無礼の段、平にご容赦を」
突然、手錠を掛けられたままの敦士の前に跪く兵庫介と忍者たち。
「一体何のつもりだよ!? 俺をどうするつもりなんだ!? いや、俺のことなんかどうだっていい。椿姫はどうしたんだ! 早く彼女を解放してくれ!💦」
「落ち着かれませッ!!」
ややパニック状態だった敦士は、兵庫介の一括で静まり返る。
「実は貴方様は我らがお探し申し上げていた、後南朝皇胤の末裔に当たらせられるのです」
「コウナンチョウ? コウイン? 何だよそりゃww」
兵庫介の説明によると、敦士から数えて30代前の先祖に当たる武将・松川織部正信光が自分の娘を後南朝のさるやんごとなき御方に側室として差し出し、そして生まれた男子を密かに自身の子として匿い育てたのだという。
「それが俺の先祖だっていうのか!? だとしたら何だっていうんだよ。もう600年以上も前の話じゃないか!」
「貴方様には高貴なお血筋が流れておられる。貴方様の家の蔵から密かに押収した家系図、そして先程髪の毛から採取したDNA鑑定の結果からも、それは証明されました。だからこそ、これより我ら一党の旗頭となって頂く。これは貴方の生まれ持った宿命なのです」
「バカバカしい。早くこの手錠を外して、俺を帰してくれ。もうこれ以上そんな話に付き合ってられるかよ!」
「聞き分けのない…。ならば仕方がない! 伽羅、例の捕まえた検非違使の娘を連れて来い!」
それまで恭しくしていた態度を急に一変させた兵庫介の一声で、隣の部屋に監禁されていた絢那が伽羅たちに引っ立てられて来る。
「んんんーっ!!んんむーっ!!」
縛られている絢那を取り押さえている忍者は、彼女の首筋に忍刀を突きつけている。
「椿姫!? お前ら…椿姫をどうしようってんだ!?💦」
「お前がどうしても我らの旗頭にならぬというのであらば致し方ない。代わりにこの娘に責任を取って〇んでもらうのさ」
「何だって!? やめろー! 椿姫は関係ないじゃないか!!」
絢那を助けてくれるよう必死に懇願する敦士だったが、兵庫介はそれを冷たく拒絶する。
「この娘はお前の一世一代の愛の告白を蹴って振ったんだろ? 云わばお前に恥をかかせた女だ。ならばそう庇い立てすることもあるまい!」
「…なっ!? 何でそんなことまで知ってんだよ!? 確かにそうだけど…それでも椿姫は、俺の大事な友達なんだ! それに振られたからって女の子を見捨てるようじゃ、それこそ男が廃るってもんだぜ!」
「ならば我らの言うとおりに従うな!?」
「………」
敦士は考え込むように暫し口を閉ざした後、苦渋に満ちた表情で重く口を開いた。
「くっ、分かったよ…。旗頭でもなんでも好きなようにしろ。でも、椿姫には手を出さないでくれ…」
「フフフッ…よかろう。それでは伽羅、これより敦士様を吉野のご老人のところへご案内申し上げろ。女は元の別室に閉じ込めておけ!」
「んむぐぐーっ!! んぐんぐぐーっっ!!(いけない松川くん! 私のためにそんな奴らの言いなりにならないで!!)」
「ジタバタ騒ぐな! いいからこっちへ来い!」
絢那は忍者たちによって元いた部屋へと引っ立てられてしまった。それを敦士は、ただ黙って見ているしかない。
「待っててくれ椿姫、必ず助け出してやるからな。それまでどうか辛抱してくれ…!」
吉野の邸宅へ
京都市内から車に乗せられおよそ3時間、着いたのは奈良県の吉野山の山中である。
「敦士さま、到着いたしました。車からお降りください」
車から降りた敦士は、目の前の光景に茫然となる。
「こんな場所にこんな大きい屋敷があったなんて…! まるで城じゃんか…」
うっそうとした森の中に立つ広大な邸宅の正門を目の当たりにした敦士は、思わず絶句する。青々とした暗い森の中に囲まれたその邸宅は、不吉で邪悪な雰囲気を醸し出している。いったいこの中で何が自分を待ち構えているというのだろう…?
「さあ、敦士様、こちらへお急ぎを…」
「えっ? あ、あぁ…分かった」
案内されるがままに邸宅の中へと入っていく敦士。果たして、これから彼が行おうとしている決断とは!? そして彼を待ち受ける吉野の老人とは!?
つづく。
コメント
後南朝に楠木党・・・失われたかの南朝の復興を・・・!?
となると吉野の老人とは、もしやかつての南朝の・・・!?
壮大な歴史ミステリーになりそうな予感も。
こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、吉野の老人一味の設定は『逃げ〇手の若君』人気に便乗できそうです(;^_^A アセアセ・・・
松川敦士くんの位置づけ
振られモブ→拉致られモブ→物語の中核、超重要人物
クラスチェンジっぷりがエグいんですけど…
本人の意思とは関係なく強引に祭り上げられる様は、本当に哀れとしか…振られた黒歴史まで掘り出されるとか、もはや殆ど罰ゲーム、
兵庫介殿も、なんかやっぱり昨日観た暴れん坊将軍スペシャルの余の顔を見忘れたような感じの人になってきてるし…
そして我らが絢那ちゃんも、楓子ちゃんを召喚したまでは良かったが…落とし穴に落ちて捕らわれるというどこぞの宇宙刑事のパートナーを連想させる大失態、
さっそく縛られ猿轡をされ、まさかの自分が人質になるというまさに木乃伊取りが木乃伊になるってやつですね!
一枚目の柱に縛りつけられている絵も良いですが、二枚目のナイフを突きつけられている絵がそそりますね!
彼女にはもう少し捕まっていてもらいたいものですね、松川敦士くんを従わせる餌として、一度逃げ出そうとして捕まるとかして欲しいですね!
…さて、楓子ちゃんは只今フリー状態ですが、ちゃんと働いてくれるのでしょうか?
祐宜くんへのメッセンジャーになるのか、それとも独断で動いて失敗してしまうのか、次の行動が気になるところですね。
> 松川敦士くんの位置づけ
> 振られモブ→拉致られモブ→物語の中核、超重要人物
> クラスチェンジっぷりがエグいんですけど…
管理人も当初の想定を超えて独り歩きを始めた感じの松川敦士くんに驚いております。最初はお蔵入りしていたAIイラストのほんの再利用のつもりでしたのに、ひょっとしたら石上美紀ちゃんと同様に今後のレギュラー入りの可能性も高まったかもですね。
> 兵庫介殿も、なんかやっぱり昨日観た暴れん坊将軍スペシャルの余の顔を見忘れたような感じの人になってきてるし…
管理人も見てました。結論から言うと面白かったです。改心したはずの尾張宗春が悪に戻ってたり、町火消しの頭を引退したはずの辰五郎が何の説明もなく復帰してたり、亡くなった設定の筈の辰五郎の妻・おさいさんが生き返ってたり、「壬生守(みぶのかみ)?」という架空の官職(国司)名が出てきたりと、いろいろとツッコミどころはありましたが(;^_^A アセアセ・・・
> 彼女にはもう少し捕まっていてもらいたいものですね、松川敦士くんを従わせる餌として、一度逃げ出そうとして捕まるとかして欲しいですね!
第5話に進む前の「第4.5話」という形で挿入してみました。
https://okamenogozen.com/zakki-2025-01-05/#toc2
> …さて、楓子ちゃんは只今フリー状態ですが、ちゃんと働いてくれるのでしょうか?
次回、第5話にて楓子もバトルで活躍すると思います。
楠木党の人捜し、予感してはおりましたが、敦士君が当たりクジ‼短時間で監禁場所を特定した絢那ちゃんも流石、と言いたいところですが、やっぱりこれ捕まる前のフラグでしたか…。旅鴉様も言及されておられますが、こちらでも落ちながら縛られていってしまったんでしょうか…。何はともあれ白夜叉の伽羅さんいい仕事してます。風祭兵庫介が抑えを利かせているようですから以前登場した某欲ボケ集団のようになることはないとは思います。
絢那ちゃんの身の安全のため、とりあえずは楠木党に従うことにした敦士君、どのような秘密を聞かされることになるんでょうか…。
>…さて、楓子ちゃんは只今フリー状態ですが、ちゃんと働いてくれるのでしょうか?
祐宜くんへのメッセンジャーになるのか、それとも独断で動いて失敗してしまうのか、次の行動が気になるところですね。
まあ前者でないとスムーズに祐宜君への登場へと運べませんが、後者で連縛に発展するというのも捨てがたいような…。悩ましいですね。
> こちらでも落ちながら縛られていってしまったんでしょうか…。
『宇宙刑事シャイダー』でアニーが落とし穴に落ちながら自動的に縄が巻き付いて縛られていき、穴の底にある牢屋に着地する頃には緊縛完了! あれってどういうシステムなんでしょうか? 縛られた状態で底に落ちて怪我一つしてないアニーも凄いですが…。
ちなみに西郷輝彦版『江戸を斬る』では、松坂慶子さん演じる紫頭巾が落とし穴に落ちた時、さらに上から捕獲用の網を被せられて引き上げられた後に縛られてました。
> 風祭兵庫介が抑えを利かせているようですから以前登場した某欲ボケ集団のようになることはないとは思います。
そういえば今回はまだ「ぐへへシーン」がありませんでしたね。吉野の老人一味はコンプライアンス?がしっかりしているようです。
> まあ前者でないとスムーズに祐宜君への登場へと運べませんが、後者で連縛に発展するというのも捨てがたいような…。悩ましいですね。
次回第5話で載せるAI生成イラストで描かれているバトルシーンでの楓子の服装が、ストックのある楓子の緊縛イラストの服装と違うため、連縛は出来ないです。ごめんなさい🙇
絢那ちゃんと楓子の連縛は、いずれまたの機会に…。