旧知の仲であるシーディングリア連邦王国の王太子エリオス=ノエル=ハーヴィンから依頼を受けたシルカイ族の次期族長レイヴンは、国境近くで失踪した隣国ウィングランドの王女フィオレンティーナの行方を追う。エリオスが案内役としてつけてくれた近衛騎士のカイ=ルシアードと共に失踪現場の街道を捜索するレイヴンと妹セリーナだったが、そこで3人は、カイの幼馴染ミレイアが山賊に連れ去られる現場を目撃した。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
夜襲
夜の帳が森を包み、山賊のアジトには油断と酒の匂いが満ちていた。
その闇を裂くように――戦いは、突然始まった。
最初に動いたのはレイヴンだった。
「――今だ」
低く合図すると同時に、扉が蹴破られる。
鋭い金属音と共に、見張りの山賊が仰天した顔で振り向くより早く、レイヴンの剣の柄が鳩尾に叩き込まれた。
「ぐっ――!」
男は声も上げられずに崩れ落ちる。
続いて踏み込んだセリーナが、素早く足払いをかけ、別の男を床に転がした。
「動かないで!」
彼女の短剣が喉元に突きつけられ、山賊は青ざめて動きを止める。
「生け捕りだ、殺すな!」
カイの声が響き、三人は息を合わせてアジト内部へとなだれ込んだ。
狭い廊下、粗末な部屋、積まれた盗品の影――
次々と現れる山賊たちに対し、レイヴンは豪快かつ的確な剣技で制圧していく。刃は急所を外し、打ち払うように男たちを地に伏せさせた。
「くそっ、なんだこいつら!」
「一人ずつ相手してやる!」
セリーナは壁伝いに動き、背後から肘打ち、関節技で相手を無力化する。
小柄な体躯を活かした動きに、山賊たちは翻弄されるばかりだった。
「兄さん、右!」
「分かってる!」
二人の連携は見事だった。
一方、カイは一直線に奥の部屋――ボスの居場所を目指していた。
扉を蹴り開けた瞬間、彼の目に飛び込んできた光景に、息が止まる。

「……ミレイア!」
「んっ、んんっ!!」
粗末な椅子に縛られ、猿轡を噛まされたミレイア。その背後から、山賊のボスが彼女を盾にして立ち上がった。
「へへ……来やがったな、騎士様」
ボスはミレイアの喉元に剣を突きつける。
「この娘がどうなってもいいのか!?」
「やめろ! 卑怯だぞッ!」
カイは即座に剣を構えたまま、足を止める。
ミレイアの目に涙が浮かび、必死に首を振る。
「一歩でも近づいたら、この細い喉が――」
その瞬間。
――ガンッ!
背後から、鈍い衝撃音。
「ぐっ!?」
山賊のボスがよろめいた。
レイヴンが音もなく背後に回り込み、剣の柄で脇腹を強打していたのだ。
「今だ!」
その隙を逃さず、セリーナが滑り込むように動いた。
「大丈夫よ!」
素早くナイフで縄を切り、猿轡を外す。ミレイアの体を抱き寄せ、距離を取る。
「ミレイア!」
人質を失い、完全に隙だらけになった山賊のボスを、カイは見逃さなかった。
「――覚悟しろ」
一閃。
剣は相手の腕を弾き、続く一撃で膝を打ち抜く。ボスは呻き声を上げて崩れ落ち、剣を取り落とした。
「う、うぐ……!」
「終わりだ」
カイは剣を喉元に突きつけ、素早く縄で拘束する。
その頃には、他の部屋や廊下でも戦いは決していた。
レイヴンとセリーナの手で山賊たちは次々と武器を奪われ、縄で縛られ、誰一人として命を落とすことなく制圧されていた。
静寂が戻る。

解放されたミレイアは、足の力が抜けたようにその場に崩れ、次の瞬間、カイにしがみついた。
「……っ、カイ……!」
堰を切ったように涙が溢れる。
「怖かった……本当に……」
「よしよし、もう大丈夫だからな」
カイは剣を収め、そっと彼女を抱きしめた。
「誰も、お前を傷つけさせはしない」
ミレイアは彼の胸に顔を埋め、声を殺して泣き続けた。
その様子を、レイヴンとセリーナは静かに見守る。
「これで全員生け捕りだ」
レイヴンが周囲を確認しながら言う。
「……ああ」
カイは頷き、ミレイアの背を優しく撫でた。
こうして山賊一味は壊滅し、少女は救われた。
そしてこのアジトこそが――フィオレンティーナ姫失踪の謎へと繋がる、決定的な糸口となるのだろうか?
発見
山賊たちを全員縛り上げ、アジトの安全を確保した後――
レイヴンは奥へと続く一枚の扉の前で足を止めた。
他の部屋よりも分厚く、簡素な鍵が掛けられている。
嫌な予感が胸をよぎりつつ、彼は剣の柄で鍵を壊し、静かに扉を押し開けた。
その瞬間――
「……っ……」
言葉が、喉に詰まった。
室内には、血の匂いが濃く立ち込めていた。
無造作に、まるで荷物のように積み重ねられた亡骸、亡骸、亡骸。
鎧の紋章はすべて同じ――ウィングランド王国の騎士団。
「……どうしたの、兄さん?」
背後からセリーナが近づこうとした、その肩をレイヴンが強く掴む。
「お前は見るな!」
思わず荒くなった声に、セリーナは息を呑み、その場に立ち尽くした。
床には乾いた血溜まり。剣創、魔法による焼け跡。
明らかに、正面からの戦闘ではない。
奇襲、あるいは――別の手段。
さらに奥へ目を凝らしたレイヴンは、もう一つの異常に気づいた。
「……馬車……?」
瓦礫の陰に、半ば解体された豪奢な馬車が押し込められている。
間違いない。
フィオレンティーナ姫を乗せていたものだ。
「やはり、ここが……」
駆けつけてきたカイも、室内を見渡し、歯を食いしばった。
「……ウィングランドの騎士たちだ。全員……」
沈痛な沈黙が落ちる。
やがて二人は、縛り上げた山賊のボスを引きずり出し、松明の明かりの下に立たせた。
「答えろ」
レイヴンの声は、怒りを抑えた低音だった。
「あの騎士たちの亡骸と、馬車をどうやってここまで運んだ?」
ボスは青ざめ、視線を泳がせる。
カイが一歩前に出る。
「あれだけの数を、蹄や車輪の跡も残さずに運べるはずがない。
瞬間移動――テレポートの魔法を使ったに違いない。
それが使える魔法使いがいたはずだ。
そいつはどこにいる!?」
剣先が喉元に突きつけられ、山賊のボスは悲鳴に近い声を上げた。
「し、知らねえ! 本当だ!💦
俺たちは……俺たちはただ、黒いローブの男から金を貰っただけなんだ!」
「黒いローブの男……?」
レイヴンの眉が寄る。
「そいつが言ったのは、“馬車と亡骸を隠せ”ってことだけだ!
顔も分からねえ! 声だって思い出せねえんだ!
魔法使いかどうかも……分からねえ!」
嘘をついている様子はなかった。
恐怖に震える姿は、真実を語る者のそれだった。
「……もういい」
レイヴンは剣を下ろす。
こうして、黒幕の正体は霧の中へと消えた。
その後、三人は夜を徹して作業を続けた。
森の外れに穴を掘り、ウィングランド王国の騎士たちの亡骸を一人ひとり丁重に運び、鎧を整え、剣を胸に抱かせて土に還す。
「どうか……誇りある眠りを」
カイは騎士としての礼を尽くし、深く頭を下げた。
翌朝。
屯所から派遣された役人と兵が到着し、山賊たちの身柄は正式に引き渡された。
山賊のアジトは封鎖され、捜査は王国の手に委ねられる。
すべてを終えた後、森の入口で、ミレイアが不安げにカイを見上げる。
「……これから、どうするの?」
「一度、村に戻ろう」
カイは穏やかに答えた。
「俺の……いや、俺たちの故郷、エルダリス村に」
レイヴンとセリーナは顔を見合わせ、静かに頷く。
黒いローブの男。
瞬間移動の魔法。
そして、未だ行方知れずのフィオレンティーナ姫。
謎は深まるばかりだが――
彼らは次の一歩を踏み出す。
朝日に照らされる森を背に、三人と一人の少女は、エルダリス村へと向かって歩き出した。
(つづく)

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