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「イヤッ、放して! 私一人だけいったいどこへ連れて行こうというの!?」
「騒ぐな! とっとと歩け。しばらくの間お前にはな、他の仲間の目につくところにいてもらっては困るんだよ」
屋敷の地下深い秘密通路を、戦闘員によって一人寂しく連行される藤永沙織。泣き叫ぶものの、その声は決して地上にいる理人たち仲間に届くことはない。だがそこへ突然、何者かが躍りかかり、背後から戦闘員を不意打ちで殴り倒した。
「ぐはっ!?」
昏倒して気を失う戦闘員。沙織はその襲ってきた者の顔を見て驚愕する。
「…あ、あなたは!?」
「そうかい。あの坊やはスパイになることを承諾したのかい?」
「はい、全てはマダムの思惑通りに進んでおります」
屋敷の庭にあるテーブル席で優雅なティータイムを楽しみながら、平瀬倫生が内通に応じたとの報告を受けるマダム。
「藤永沙織は平瀬倫生の目の届かないところに身柄を移しただろうね? あの沙織と甲冑男が映った脅迫映像が、実はCGで出来た作り物だったと倫生坊やにバレたら面倒だからねぇ」
「その点に抜かりはございません。今頃藤永沙織は、この屋敷の地下深い仕置き牢に幽閉されている筈」
「あとでその仕置き牢の様子も見に行かないとね。沙織ちゃんとはどんなことをして遊ぼうかしら。(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
その時、ティーカップを握るマダムの指が俄かに震え始めた。
「………」
「マダム、いかがなさいました?」
すると突然マダムが奇声を上げて椅子から転げ落ち、そのまま地面に倒れてしまう!
「う、うギャアァァッッ!!」
「マ、マダム!?」
「く、苦しいッッっ!!」
「マダム、お気を確かに!?」
「私を…早く私を、あの部屋へ…!!」
私の名前は岸本愛実。首都圏にある青葉総合大学に通う大学1年生よ。私たちは数日前、テニスサークルの合宿で近くの高原に来ていた際に、ある事情でこの監禁屋敷に捕まってしまった。私は脱出の機会を伺うため、屋敷の主であるマダムに従順になったフリをして、日々仲間のみんなと一緒にここから逃げ出すチャンスを狙っていた。その甲斐あってマダムの信用を徐々に勝ち得て行った私は、屋敷の掃除などの簡単な家事を手伝う名目で、屋敷の敷地の範囲内で自由に行動する権利を認めてもらうところまでどうにかこうにか行き着くことに成功した。あともう少しよ! あのマダムに私たちの真意を気取られることなく、必ずここから脱出して見せるんだから!
そんなある日、私が屋敷の広い廊下を箒で掃いていると、戦闘員に抱えられた見たこともない老婆がどこかへと連れて行かれる様子を目撃した。誰だろう? あの老婆、マダムがよく身に着けているドレスを着ていたけど、まさか…!? 一体どこへ行くのだろう。よぉ~し! 後をつけて確かめなくちゃ!
戦闘員は廊下の壁に埋め込まれていた隠しボタンに暗証番号を入力すると、隠し扉が作動しマダムと二人で中へと入って行った。物陰から暗証番号を見ていた私はそれを頭にしっかりと記憶し、隠しボタンに同じ番号を打ち込む。するとさっきと同じように隠し扉が開き、中はエレベーターになっていた。私は迷わずエレベーターへと乗り込んだ。動き出すエレベーター。かなり地下深くへと進んでいるようだ。そして最深層の階へと到着した。
「ここは…!?」

そこには何かの研究施設のような空間が広がっていた。とりあえず周囲に人は誰もいないようだ。私は先程のマダムと戦闘員の姿を探す。やがて施設の最奥部で、何かの装置のような実験椅子に座る老婆と、その傍らでいろいろと装置を動かしている戦闘員たちを見つけた。装置が作動すると実験椅子に座った老婆にエネルギーのようなものが注入されて行き、みるみると若返っていく! そして老婆は私たちがよく知る、あのマダムの姿へと変貌したのだ!
「あのマダムの正体は…老婆だったのね!?」
思わず息を呑む私。しかしあまりに衝撃の光景に驚いた私は、迂闊にもつい足音を立ててしまった。
「そこにいるのは誰だ!?」
慌ててその場から逃げ出そうとした私だが、袋小路に追い込まれてあっけなく捕まってしまう。
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背景は、【フリー素材】 みんちりえ 【背景イラスト配布サイト】 (material.jp)様のフリー素材より拝借しました。
「見たね、小娘ッ!!」
私を部下の戦闘員たちと一緒になって取り囲んでいるマダムがニヤニヤと笑っている。でも私には分かっていた。自分から見れば年端もいかぬ小娘である私に秘密を知られたマダムの目は、決して笑ってはいなかったことを。その瞳には、殺気に満ちた憎悪が漲っていたことを。そして私を縛ろうとロープを握った戦闘員が近づいてくる。いやっ、私はこれからどうなるの…!?
――理人、助けて!!
「愛実…?」
一方その頃、屋敷内に宛がわれた個室にいた勢川理人は、今一瞬、幼馴染の愛実の助けを求める叫びが聞こえたような気がした。愛実に危機が迫っていることを直感で察した理人は、部屋の外へと出ようとする。しかし部屋の唯一の扉には、外側から厳重にカギが掛けられているのだ。外へと出られるはずがない。
「くそっ、開け!開けよこの野郎ッッ!! 愛実がピンチなんだ!!」
焦る理人はドアを強引に蹴り破ろうとするが、その時突然、ドアが独りでに自然と開いた!?
「あ、あれっ…!?」
誰かが鍵を開けてくれたのだろうか? でも今はそんなことを考えている暇はない。廊下へ出た理人は必死になって愛実の姿を探り回る。
「愛実、どうか無事でいてくれ!!」
果たして理人は愛実の危機に駆けつけることが出来るのか!?
コメント
沙織ちゃんを助けた謎の人物、正体を現す人外マダムとその正体を見てしまいピンチに陥る愛実ちゃん、そして虫の知らせで愛実ちゃんの危機を知り走り出す理人くん、色々と見所ありますね~
いや~大物だと思ってたマダムがウルトラマンのカラータイマー時間切れの如くぶっ倒れたり、倫生くんが屈服させることが出来たと安心しきったり、挙句あっさり正体を愛実ちゃんに見られるなど…強キャラかと思ったら意外と駄目な人かもって思い始めてます…
>「くそっ、開け!開けよこの野郎ッッ!! 愛実がピンチなんだ!!」
愛実ちゃんの叫び声が聞こえたような気がする…がもはや確信の如く動きだす理人くんにちょっと笑ってしまいましたが、2人の絆の強さを感じますね、こうゆう時の第六感は正しいのです!
「…あ、あなたは!?」と沙織ちゃんが言っているところを見ると、TEAM FRIENDSの人間ではなさそうですね、
理人くんの部屋の鍵を開けたりと、どうやら第三者が動いているようですね、一体何者なのか気になるところですが、自分の考え過ぎでスパイとして動いている筈の倫生くんの可能性もありますね。
> 沙織ちゃんを助けた謎の人物、正体を現す人外マダムとその正体を見てしまいピンチに陥る愛実ちゃん、そして虫の知らせで愛実ちゃんの危機を知り走り出す理人くん、色々と見所ありますね~
いよいよからくり監禁城編も佳境へと差し掛かって来たようです。
> いや~大物だと思ってたマダムがウルトラマンのカラータイマー時間切れの如くぶっ倒れたり、倫生くんが屈服させることが出来たと安心しきったり、挙句あっさり正体を愛実ちゃんに見られるなど…強キャラかと思ったら意外と駄目な人かもって思い始めてます…
まあそれくらいのハンディがないと、純粋な一般人に過ぎないTEAM FRIENDSの面々では人外マダムに対して太刀打ちできませんからねぇ。(;^_^A
前回の沙織ちゃんの映像がCGだったとは‼妖術を使って幻影を見せるという線もありだと思いましたが、やはり妖術を使うのはエネルギーを要するんでしょうねえ。
それと結び付くかのように愛実ちゃんにはマダムの正体を目の当たりにするという4人のトリを飾るに相応しい見せ場が出来ましたね。この後愛実ちゃんはマダムの若返りのエネルギー源にされる危機に直面するわけですが果たしてこの危機に理人君は間に合うのでしょうか?そして沙織ちゃんが出会ったのは?旅鴉様は倫生君の可能性を指摘されておられますが、ここはやはり正義の味方的な第三者が沙織ちゃんを救出、スパイに仕立てられた倫生君の元に届けるという展開になるかもしれませんね。
> 旅鴉様は倫生君の可能性を指摘されておられますが、ここはやはり正義の味方的な第三者が沙織ちゃんを救出、スパイに仕立てられた倫生君の元に届けるという展開になるかもしれませんね。
皆様なかなか勘が鋭くていらっしゃる。どなたの予想が当たっているかについては追々に。( ̄ー ̄)ニヤリ