あれから一週間が経った。最初は粗末な屋根裏部屋で3人一緒に監禁されていた親友の岸本愛実、ボーイフレンドの平瀬倫生(とも君)、そして私こと藤永沙織は、3日前に突然一人ずつ別々の個室に移された。豪華な家具で設えられた部屋で、唯一のドアには外側からカギが掛けられていて勝手に外へは出られないものの、部屋の中にいるうちは縄も解かれて手足も自由だ。部屋の中にはトイレにシャワー室、テレビまであり、待遇は以前に比べて格段に改善された。私たちが合宿に持参してきていた着替えなどの荷物もそれぞれ返却されている。着ていたテニスウェアは今洗濯してもらっているので、私は今、着替えで持ってきていた私服のTシャツとショートパンツを着用している。
一週間前のあの日、私達が捕まっていたあの屋根裏部屋に同じサークルの仲間の勢川理人くんが連れて来られた時、彼は私たちの待遇改善を掛け合うようなことを言ってくれていた。今の待遇は、そのおかげなのだろうか…? でもその代わりにもし、今現在勢川くんが私たちのために酷い目に遭っているのだとしたら、彼に申し訳がない。そして私たちが別々の部屋に移されてから、とも君とも愛実とも一切会っていない。いくら待遇がよくなっても、ここでは私は孤独なのだ。寂しいよ…。…会いたい! 会いたいよ! 愛実に、勢川くんに、そしてとも君に会いたい…!!
その時、コンコンとドアの方からノックが鳴った。
「どうぞ」
ノックに反応した私がそう言うと、ドアを開けて中に入って来たのは案の定、あのマダムの手下の戦闘員の人だ。
「マダムがお呼びだ。支度をしろ」
「分かりました」
「悪いな。お前を縛って猿轡も噛まさせてもらうぞ」
「………」
「んっ、んむっ…」
私は抵抗することなく、猿轡と縄の戒めを受け入れる。この部屋から出られる時はいつもこうだ。自由の身のまま廊下へすら出ることも許されない。それがここ監禁屋敷の掟なのだ。
戦闘員に階下へと連行され。一段ずつゆっくりと階段を下りて行く私。
「んっ、んんっ……」
ああ、ここで大声を出せればこの屋敷のどこかにいるであろう、とも君や愛実、勢川くんにも私の居場所を知らせることが出来るのに…! この猿轡さえなければ、仲間たちに私が今も元気なことを知らせることもできるのに…! 私から言葉の自由を奪っているこの白い布で出来た猿轡が恨めしい。
そして私は、マダムの待ち受ける1階のリビングへと到着した。
「待っていましたよ沙織さん、テニスウェアも可愛かったですが、その私服のTシャツとショートパンツも最高です」( ̄ー ̄)ニヤリ
「………」
連行されて来た私の姿を見てご満悦の様子のマダム。
私の名前を気安く呼ばないで!
私は貴女なんかに心を許した訳じゃない。
負けるな沙織! 仲間のみんなの無事が確保されて、脱出のチャンスが訪れるまでの辛抱よ。
絶対に貴女なんかに負けないんだから!!
コメント
これは壮大なストーリーになりそうですね~
1人ずつの視点で話を進めていくのが良いですね、それぞれの心情が解かって面白いです。
手に入れたコレクションを眺め悦に浸る人外マダム、コレクションをたまに取り出して眺め楽しむ気持ちは何となく解ります。
だが、まだまだ心まで屈服していない沙織、屈辱に耐え偲ぶ彼女達に希望の光は差すのか…さて他の捕らわれ人達のお話も気になるところですね。
次回は平瀬倫生くんの様子を描く予定ですが、きちんと女の子のDID(沙織ちゃん?)もご用意しますのでお楽しみに。