首都圏にある某公立大学に通い、同じテニスサークルに所属している勢川理人、岸本愛実、平瀬倫生、藤永沙織の4人は、その日もいつものようにサークル活動でテニスを楽しんでいたある日、突然の謎の落雷を受けて意識を失い、気が付くと見たこともない異世界に召喚されていた!
「ここは何処なんだ!?」
「ダメだ! スマホも全く通じない!」
「一体何がどうなってるの!?」
初めて見る遺跡のような場所で4人が訳も分からないまま右往左往していると、しばらくして空の向こうから巨大な一匹の竜が翼をはばたかせながら、4人の目の前に舞い降りて来た。
「…ど、ドラゴン!?」
「ば、化け物ッッ!!」
「キャアアッ!!」
このままだと捕まって食べられる!?とパニックになり遺跡の中を逃げ回る4人だが、竜は襲い掛かって来ることはなく、むしろ逆に4人に対して威厳ある声で優しく諭すように語りかけて来た。
「遥々異世界からよくぞ来た! 我はこの世界タシェニュヴルアを司る青き龍神ブルードラゴンである!」
「ドラゴンが…喋った!?」
驚いた理人たちは、とりあえずブルードラゴンの話を聞いてみることにした。
ブルードラゴンの話によれば、ここは地球から遠く離れたタシェニュヴルアと呼ばれる異世界。今、タシェニュヴルアは魔界より侵略して来た魔王軍の脅威に晒されようとしており、理人たちは魔王の陰謀を阻止するためにブルードラゴンによってこの世界へと召喚されたのであった。気高き龍神から誇りある勇者の役目を託された理人たちだったが、彼(彼女)らから返って来たのは快諾の言葉ではなくブーイングの嵐だった。
「それって早い話、僕たちは見知らぬ土地に拉致されたってことじゃないか!? 僕たちの世界では、それは立派なテロに該当するんだぞ!」
「私たちに魔王を倒すだなんて無理です!」
「早く俺たちを元の世界に帰しやがれ!」
しかし理人たちから猛抗議を受けたブルードラゴンはいやらしくニヤリと笑い……
「いいのかなぁ~そんなことを言って? 我は神様だぞ! お前たちが無事に元の世界に帰れるかどうかも、全て我の胸先三寸次第なんだけどなぁ~!」( ̄ー ̄)ニヤリ
「うわ!? ひでー神様だぜ!!」
「チェッ、結局俺たちに選択権は無しかよ」
理人たちは憤慨しつつも、これ以上抗ってもどうしようもなさそうなので、ここは素直に龍神の言葉に従うことにした。
「でも現実問題として、僕たちは地球ではごく普通の大学生だ。モンスターと戦う力なんてないぜ」
「そうよそうよ! 私、魔物と戦って怪我なんかしたくないわ! 第一怖いもん!」
「その心配ならば無用だ。お前たちの持っている、そのラケットとか言う棒を我の前に差し出すがよい」
「あ、ああ…こうでいいか?」
理人たちは龍神の前にそれぞれの持っていたテニスラケットを差し出した。すると龍神は何やら呪文らしきものを詠唱し始め、地面に置かれたラケットに稲妻が降り注いだ。大事なラケットが一瞬黒焦げになった!?と慌てた理人たちだったが、ラケットは何も変わりはなく無事な様子。龍神からラケットを返却された理人は、龍神から「あの岩めがけてボールを打ち込んでみろ」と促される。
「何だろう? 何故だか知らないけど、ラケットを握った瞬間、力が体中に漲って来る…!」
そして言われた通りに理人が岩めがけてサーブを打つと、ボールが当たった岩は粉々に打ち砕かれた。
「す、すごいわ!?」
「よしっ、今度は俺がやってみる」
次は倫生が何もない方向に向かってラケットを素振りすると、強力な竜巻が発生した。
「ま、マジかよ…」
「とも君かっこいい~!」
「お前たちに戦う力を授けたのだ。そのラケットとやらがこれからお前たちの身を守ってくれよう!」
「これなら魔物と出くわしても戦えそうだな」
「すげー! まるでテ〇ヌみたいだぜ!!」
「ストップッッ!! その言い方は著作権的にマズいから超テニスって言い方に変えようぜ!」
「………(著作権??)」
龍神の言葉に納得する理人たち。
「ああ、そうだ。そこの娘よ」
「えっ、私ですか?」
龍神から突然の指名を受ける愛実。
「この4人の中では、お前が一番しっかりしていそうだからな。お前にこれを授けよう!」
龍神は、愛実の右手の中指に眩く光るエメラルドリングの指輪を填めた。
「きれい…」
「愛実ったらうらやましいなぁ。私にもよく見せてよ~!」
指輪のエメラルドの輝きを意味深そうに見つめる愛実。そのすぐ隣では、沙織が羨ましそうに指輪に見とれている。
「何か困ったことがあったら、その指輪のエメラルドの部分をさすってみるがよい!」
「ちょっと待ってくれ! 俺たちはこれからどこに向かえばいいんだ!」
「ここはウグアル大陸の東、アイムルナ王国にあるハガルガサドの神聖なる遺跡! ここから南西に向かって歩けばドレグレフの村へと辿り着けるはず! まずはそこを目指すことだ!」
それだけ言って龍神は再び大空へと飛び立ち去ってしまった。
「あ、行っちゃった…」
「とりあえず言われた通り南西を目指してみるか」
早速龍神の言いつけに従ってドレクレフ村を目指す理人たち4人だったが、ハガルガサド遺跡から出た街道を南西に向かって歩けど歩けど全く村らしき物は見えてこない。
「参ったな。どこまで行っても村なんか見えてこないぞ」
「そもそもこっちが南西の方角で合ってるんだよな? 太陽の方向を頼りに歩いては来たけど、方位磁針を使ってここまで来たわけじゃないし、もしかして方向が違ってたなんてことは…」
「もう歩けない! 足も痛い~! 疲れたァァ!!」
沙織がとうとう子供みたいに泣き言を喚いて駄々を捏ね出した。でも彼女の言うとおり、確かに喉も乾いて来たし腹も減って来た。このまま飲まず食わずで異世界で野宿かと覚悟しかけたが、ここで龍神の言葉を思い出した理人が愛実に何かを促した。
「そうだ愛実、その指輪をさすってみろよ! あの龍神が”困ったことがあったら指輪を使え”って言ってたじゃないか!」
「うん、分かった!」
愛実が指輪をさすると、エメラルドの宝石の中から煙のように指輪の精が姿を現した。
「吾輩は青き龍神ブルードラゴン様に仕えし指輪の精霊、ユニコーンドラゴンのユニモフだもふ」
「きゃあっっ!! 可愛いっっ!!💓」
「こ、こらッ、抱き着くなもふ! 苦しいもふ!」
思わず愛くるしい容姿の指輪の精・ユニモフに抱き着いてしまう愛実&沙織のガールズ2人組。
「吾輩はブルードラゴン様からお前たちの旅のお目付け役を仰せつかっているもふ。それで、吾輩を呼び出した用件は何だもふ?」
「水と食料、それに寝床がなくて困っているんだ。何とかしてくれ」
「なんだそんなことかもふ。お安い御用だもふ」
ユニモフは魔法の力で宿泊用のコテージを呼び出した!
「す、すげー! 中は冷暖房も完備で、ただ単に水道だけじゃなくて水洗トイレやシャワーまであるぞ!」
「冷蔵庫の中には新鮮な食材が詰まってるわ! 立派なキッチンもあるし、これならお料理に困ることもなさそう」
「ねえ見て見て! ベットのお布団もふかふかだよ~♪」
さっきまでの疲れ切っていた姿が嘘のように、沙織はベットの上で元気にはしゃいでいる。
「中にはこれからの旅に必要な道具も揃えてあるもふ」
「ねえ見て、テーブルの上に何か紙が置いてあるわ」
「これがこの世界の地図か…」
理人と愛実は、テーブルの上に置いてあった地図を拡げてみた。
「今私たちがいるアイムルナ王国、この大陸一の大きい国みたいね」
「当面の目的地のドレクレフ村はここかぁ…。なあユニモフ、そこから先は俺たちはどう行けばいいんだ? 僕たちはさっさと魔王を退治して地球に帰りたいんだが?」
「今は余計なことは考えるなもふ。目的地に進んで行けば、やがて新たな道は開かれるもふ」
理人とユニモフが会話しているところへ、理人がクレームを言いに割って入った。
「おいユニモフ、衣装タンスの中に入ってた俺たちの着替えだけどな。全部俺たちが今着てるテニスウェアと同じ服ってどういうことだよ!?」
「お前たちが今着てる服を参考にして吾輩が魔法で複製したんだもふ。気に入らなかったかもふ?」
「気に入るとかいらないとかそういう問題じゃないだろ?」
「そうよね。この世界に住んでいる人たちが着ている衣服と同じような服じゃないと、目立って怪しまれたりしそう」
倫生の隣にいた愛実も彼の意見に同意する。
「心配いらないもふ。このアイムルナ王国は海外との交易が盛んなことでも知られた大国。お前たちのその格好を見ても、余所から交易に来た異国人独特の民族衣装だと思われるだけもふ。それに吾輩は一から新しい服を創造する魔法は習得していないもふ」
「ちぇっ、しょーがねーなぁ。細かいところで使えない奴だ」
「何か言ったもふか?」
「いや、別に」(*`へ´*)
倫生はやや不本意そうな表情ながらも納得したようだ。確かにこれから魔王と戦う旅に出るというのに、着ている服がずっと半袖に短パンのままというのは些か心もとないのは確かだが、そういった些細な問題はこの際後回しにしてもよいだろう、と理人は思った。
「吾輩は魔法を使い過ぎて今日は疲れたもふ。何か用があったら、また明日呼ぶもふ」
ユニモフは光に包まれたかと思うと、愛実の指輪のエメラルドの中に吸い込まれて消えてしまった。
「さあて、一日いろんなことがあり過ぎてみんな頭が混乱してると思うけど、今日はひとまず休むことにしようぜ!」
「賛成!」
「異議なし!」
「やれやれ、やっと眠れるぜ」
リーダー格の理人が音頭を取り、本日はひとまず全員睡眠をとることにした。
テニスサークル所属の大学生4人が突如として未知の世界に放り込まれ、お決まりのチート能力よろしくテ〇ヌ……ではなくて超テニス能力に覚醒し、いよいよ異世界タシェニュヴルアを舞台とした大冒険が次回より本格的に始まります!
あとがき
この記事で掲載したchin様作のブルードラゴンのイラストと、みょうち麒麟様作のユニコーンドラゴンのイラストは、どちらもSKIMAのキャラ販売にて購入したものです。
コメント
テニス
源流は古代ギリシャと言われ、現代使われているラケットは強力な武器とされていた、
ボールは元々鉄球であったと言われ、テニスは元来古代人の戦闘術であったとされる
この技術を会得するには相当な鍛錬が必要であったとされ、類まれなる腕力も必要だったとされる、
鍛錬にはそれぞれの陣地に解かれ、鉄球を打ち合う修行法もあったとされ、修行の段階で多数の死傷者も出たとされる、
現在のスポーツテニスはその名残であるのは言うまでもない、だが現代でも「テニヌ」と言う名で古代のままの技法で密かに伝承されていると言われているが、真偽は定かでない。
※参照文献 民明書房刊「スポーツの起源の全て」
スイマセン…くだらない遊びしました、色々怒られそうだな(笑
テニスサークルからまさかのファンタジー、厄介なドラゴンに目をつけられ無理矢理異世界ライフ、これは壮大な物語になりそうですね~
テニスからテニヌへ…いや、超テニスでしたね、協力の力を得て、可愛いマスコットナビもつき、さてさてこれからどんな物語が待ってるのでしょうか、期待膨らむ展開でしょうけど、まあここはDIDメインサイトですし〜、モンスター倒しレベルあげて俺つええイキり展開になるほど甘くはないでしょうね、自分の期待はむしろこっちですかね(ゲス顔
それにしても、ベッドの上のペタン座りの沙織ちゃん、可愛いですね~
> まあここはDIDメインサイトですし〜、モンスター倒しレベルあげて俺つええイキり展開になるほど甘くはないでしょうね、自分の期待はむしろこっちですかね(ゲス顔
はい、勿論そっちがメインでございます。ここは異世界。魔王軍配下のモンスターは言うに及ばず、邪教に仕える神官たち、山賊や盗賊、奴隷商人、悪徳領主、それに他国から送り込まれた工作員など、異世界からやって来た勇者一行を狙う輩は大勢おります。それに鉄人の操縦コントローラーを敵に奪われてしまった金田正太郎少年よろしく、あの魔力の宿ったテニスラケットさえなければ理人たちもただの非力な大学生。もしラケットを悪意のある誰かに盗まれてしまったり紛失してしまったりした日には、戦闘能力皆無な理人たちはあっさり敵に捕まってしまうことでしょう。
> それにしても、ベッドの上のペタン座りの沙織ちゃん、可愛いですね~
荒らしの前の静けさを象徴した、可愛らしい沙織の姿ですね。
これから彼女も幾度も敵に攫われては縛られる受難を繰り返し経験することになると思います。( ̄ー ̄)ニヤリ