BRAVERS EDITION episode.67

BRAVE SUCCESSION
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※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※掲載されている画像の無断転載を禁じます!
※アフィリエイト広告を利用しています。

黒百合一味のアジトの山荘に仕掛けられた落とし穴が自力で脱出した加藤段十郎は、アジト内に捕らえられていた小寺洸介たち4人を救出すると、敵の手に落ちたパートナーであるリネア=フリーデン=ヴァイサーを単身救出に向かった。

※文章は、chatGPTで生成しております。

麓の交番

昼下がりの山麓。
山道をひたすら下り続けていた小寺洸介たちは、ようやく舗装された道路へと出た。

「あそこに交番が……!」

道路の角に、古びた木造の交番がぽつんと建っている。
見た瞬間、洸介たち4人はまるでゴールテープを切るランナーみたいに、全力でそこに駆け込んでいた。

「助けてください! 僕たち、山で拉致されてたんです!」

桜庭陽平が真っ先に叫ぶと、カウンターの奥から、にこにこした老人が顔を出した。

「おお、そりゃまた大変だったなぁ。まあまあ、入って入って。話はゆっくり聞くからな」

まるで絵に描いたような“人の好さそうな田舎の老巡査”。
制服は少し古びていて、左胸には「深田」と書かれた名札。温和そうな目尻のシワと、のんびりした口調に、思わずこっちの肩の力も抜ける。

「ほれ、これでも飲んで落ち着きなされ」

深田巡査が、人数分の湯飲みに温かいお茶を入れてくれる。

「ふぁぁ……生き返る……」
陽平がカップを抱えて一息つくと、隣で鳳凰院優が小さく微笑んだ。

「ようやく……人間らしい場所に来られた気がするわ♪」

「ほんとにな、これで一安心だぜ……」
洸介も湯飲みを手に取り、口をつける。緑茶の苦味が、喉の奥に染み込んでいく。

漆崎亜沙美はというと、机に肘をついたまま、しばらく無言でお茶を見つめていたが、ふいに立ち上がった。

「ちょっと、外の空気吸ってくる」

「大丈夫か、漆崎さん?」
洸介が声をかけると、亜沙美は軽く手を振って返した。

「平気平気。すぐ戻るから」

そう言って、彼女はふらりと玄関を出ていった。

「ねえ、私たちを誘拐した犯人が霧深温泉のホテルに行ったのなら、ブレイバーズの人たちも危ないんじゃない?」
優が心配そうに呟く。

「だからと言って、僕たちがホテルに行ったところで何ができるって言うのさ?」
「それはそうだけど…」
「優、俺たちを助けてくれたあの加藤さんって人も霧深温泉に向かったんだし、ブレイバーズの人たちならきっと大丈夫だよ。……ん、どうした? 優?」

会話の最中に急に優が少しふらついたので、彼女を心配するように声をかける洸介。

「ごめん…急に……どうしたんだろ? なんか…凄く眠い…わ……」

最悪の目撃

外に出た亜沙美は、大きく息を吸い込んだ。
昼の陽射しがまぶしくて、少しだけ目を細める。

――けど、次の瞬間。
ふと、背後から聞こえた**「ギィ……」**という音に、ピクリと足を止めた。

……裏手の物置小屋のドア。
深田巡査が、あののんびりした足取りでそこに入っていくのが、見えた。

(ん? なんであんなとこに?)

特に気にも留める必要のない光景……のはずだった。
でも、深田巡査がポケットから右手を取り出した瞬間、亜沙美の警戒心が一気に跳ね上がる。

(――爪!?)

一瞬見えてしまったのだ。深田巡査の右手が、怪物のように鱗に覆われ鋭く長い爪を伸ばした異形の手に変化したのを……!

(あたしたち、間違った場所に逃げ込んだんじゃ……?)

ぞわりと、背筋を何かが這うような感覚。
咄嗟に亜沙美は、近くの物陰――交番横の茂みにしゃがみ込んで身を隠した。

深田巡査は物置の中でごそごそと何かをしている。
携帯を取り出し、小声で話しているようにも見えた。

(やっぱり……怪しい。絶対何か隠してる)

亜沙美の喉が、緊張でカラカラに乾いた。

(どうする……どうする、あたし……)

彼女は、震える手を握りしめながら、ゆっくりと茂みの中で身をかがめ――深田巡査から目を離さないようにその場に留まっていたのだが、ふっと深田の姿が視野から消えたかと思ったら次の瞬間、いつの間にかその深田が亜沙美の背後に回り込んでいたのだ。

「フフフッ…見たねお嬢さん!」( ̄ー ̄)ニヤリ

漆崎亜沙美イラストと背後の男のシルエットは、りばーさいど様。
背景は、Stable Diffusion Onlineで生成しました。

「…た、助けて! 洸く――んむぐっ!? んむぐぐぅ~ッッ!!!!!!」

老人とは思えぬ強い力で亜沙美を背後から羽交い絞めにし、彼女の口と鼻にクロロホルムが染みた布を押し当てる深田。

「フハハハハハ!! 騒いでも無駄だ。今頃お前の仲間たちは、お茶の中に仕込んでおいた眠り薬でぐっすりとおねんねしてる頃合いさ!」

深田の言ったとおりだった。すでに交番の中の洸介、陽平、優の3人は、お茶の中に盛られていた睡眠薬によってぐっすりと眠っていたのだ。そして徐々にクロロホルムが効いて来た亜沙美も、やがてすぅーっと意識を失ってしまうのだった。

捕らえられた詩郎とフィリス

「……くん! 詩郎くん! 起きて! 起きなさい!!」

「うっ、ううっ……こ、ここは?」

寺瀬詩郎とフィリス=ミラ=エクセリア(拘束具除く)は、Leonardo.AiのモデルLeonardo Anime XL(Anime General)で生成しました。
背景は、Stable Diffusion Onlineで生成しました。

今まで気を失っていた寺瀬詩郎が気がつくと、そこはホテル2階にある広いホールのような場所で、フィリス=ミラ=エクセリアと共に鉄枷で拘束された両手を天井から鎖で吊るされていた。

「くそっ! いったいどうなってんだ!?」

鉄枷を外そうと必死にもがく詩郎だったが、当然その固い拘束はビクともしなかった。

「無駄よ。その拘束は人の力ではどうやったって外せないわ…」
「アンタはどうしてここに? 他のみんなはどうしたんだ!?」
「分からない…。おそらくホテル内の他の部屋にそれぞれ分散されて監禁されていると思うけど…」

フィリスは、光平たちがホテルを出て行ってから起こった出来事を詩郎に語って聞かせた。電話線を切断され、妨害電波で携帯も使えない中、孤立したホテルに突如として妖魔結社ザイザムの戦闘員たちが襲って来たのだという。応戦した佳代や心翔たちだったが、ホテルのスタッフや宿泊客の中にも妖魔工作員が紛れ込んでいて多勢に無勢、ブレイバーズとシブルリックオーダーのメンバーたちは全員、奮戦空しく捕らえられてしまったのだ。

「くそっ! 俺がもう少し早く敵の罠に気づいていれば…!」

「今は悔やんでも仕方がないわ。必ず脱出のチャンスはある筈よ。とにかく今はじっとその時を待ちましょう!」

そこへ妖魔結社ザイザムの戦略諜報参謀ビオベミラ、黒百合と百合鴉、そして縛られているリネア=フリーデン=ヴァイサーが引っ立てられてやって来た。そのリネアの姿を見て驚く詩郎。

「アンタ、確か…アスカロン財団の? アンタまでコイツらに捕まったのかよ?」

「んっ、んんっ…!!」
自分自身も虜囚となった姿を詩郎に見られ、恥じらうように一瞬だけ目を背けるリネアだったが、すぐに視線を元へと戻す。

戦略諜報参謀ビオベミラのイラストは、FD様。
リネア=フリーデン=ヴァイサー(ガムテープと縄を除く)のイラストは、Dreaminaで生成しました。
百合鴉は、Leonardo.AiのモデルLeonardo Anime XL(Anime General)で生成しました。
黒百合と背景は、Stable Diffusion Onlineで生成しました。

「おやおや、もうお目覚めかい?」

拘束されていて身動きの取れない詩郎とフィリスを、勝ち誇ったように蔑みの目でニヤニヤと見つめるビオベミラ。

「ちくしょー! 放しやがれー!!」
「私たちをどうするつもり?」

そんな詩郎の叫びやフィリスの問いかけも無視するかのように、勝手に今後のことについて黒百合と話を進めるビオベミラ。

「約束通り、シブルリックオーダーの総司令フィリスの身柄とドラゴンファイヤーX1の機体はこちらに頂くぞ」
「ええ、その代わり残った連中は全員私たちが頂く。そういう契約だったわよね?」
「フン、好きにしろ。どのみち我がザイザムには不要な連中だ」
「では遠慮なく。――百合鴉、その娘を紫髪の坊やの前に連れて来て」
「はい、黒百合様。…さあ、大人しくこっちへ来るんだよ!」
「んんっ!!んぐぅー!!」

黒百合に命じられた百合鴉は、縛られたままのリネアを詩郎のすぐ目の前に立たせる。そしてリネアの傍らに立ち、そっと彼女の耳に何かを語りかける黒百合。

「さて、貴女にはやってもらいたいことがあるの。古き魔女の血を受け継ぐ家系にしか使えないという魅了チャームの能力、それを今からこの坊やに使ってもらえないかしら?」

つづく。

おまけ

寺瀬詩郎とフィリス=ミラ=エクセリア(拘束具除く)は、Leonardo.AiのモデルLeonardo Anime XL(Anime General)で生成しました。
背景は、Stable Diffusion Onlineで生成しました。

 『捕らえられた詩郎とフィリス』で最初に使う予定だった挿絵。柱を挟んで寺瀬詩郎とフィリス=ミラ=エクセリアが背中合わせに鎖で連縛されているが、後ろ手に出来ず、ブログ閲覧者の皆様から「拘束が緩い!」とダメ出しが来そうだったので、あえなくボツにして鉄枷両手釣りバージョンの方を採用しました。

 ところで学生報道部のメンバーを再捕獲した深田巡査ですが、彼は黒百合の手下かザイザムの一味なんでしょうか? それとも今回の騒ぎに便乗して現れた、全く無関係な別勢力のヴィランの可能性もゼロではないような…?

 実は深田巡査の正体について、管理人はまだ全く決めていません。これほどの面白そうな騒ぎをMr.unknownが座視しているだけで何もしないというのも考えづらく、かといって筋金入りのハント星人嫌いなMr.unknownが怪物モンスター系の人外ヴィランを配下に使っているとも想像しにくい(バイオ系のサイボーグ兵士とかならワンチャンありでしょうか? スパルトイならそういうのいそうですし…)ですね。あ、ちなみにネオブラックマフィアは、今回この件には介入してないと思います(戦闘員はザイザムに貸してますけれども…(;^_^A アセアセ・・・

 占拠された霧深温泉のホテルがザイザムから解放されても、まだ事件全体は終わらなそうですね…。


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コメント

  1. 旅鴉 より:

    寄り道をせずに、真っ直ぐ麓の交番まで辿り着いた報道部面々、そこに待っていたのはなんとも暢気な駐在さんだった、事情を説明して匿ってもらった報道部の面々、温かいお茶も出してもらい一安心したら、なんだ眠くなってきた、そして1人空気を吸いに外に出た亜沙美ちゃんが見たものは、怪しげな動きをする駐在さんだった、後を付けると…駐在さんの手が人間らしからぬ鱗に覆われ鋭く長い爪を伸ばした異形の手に、そしてどこかへと電話を掛ける駐在さん、もう怪しさしかない、ここでどうしようかと考えてる間に、瞬間移動の如くスピードで回り込んでくる怪物駐在さん、クロロホルムを嗅がされてしまう亜沙美ちゃん、そして他のメンバーは既に眠り薬でおねんね、またも捕らわれの身となる報道部、この世界に安全地帯はないのか!?

    そして所変わて、捕らわれの身となり鎖につながれている詩郎くんとフィリス王女、そこに現れたのは、女狐三人衆、黒百合姐さん、ビオベミラ様、百合鴉嬢、もうこのまま悪女レディースでユニット組みませんか?
    そして連れて来られたのは捕らわれの身にリネアちゃん、どうやら詩郎くんに魅了(チャーム)をかけさせたいようですが…
    実は、それ前に考えてました、当初は加藤が騙し討ちして詩郎くんを捕まえて、リネアちゃんに魅了(チャーム)をかけさせ、おかめの御前様の情報を聞き出させることも考えてました、その時考えていたのは、詩郎くんの中の邪神の暴走です、さて、管理人様はどうゆう展開にするか、気になりますね~

    >実は深田巡査の正体について、管理人はまだ全く決めていません。

    てっきり…妖魔結社ザイザムの怪人かと…
    う~ん、Mr.unknownは基本エイリアン嫌いですね、スパルトイは人体実験の末に出来た強化人間も考えてますから、こんなバイオ兵士もありえるかもですね。
    一番可能性があるとしたら…こいつ…

    https://okamenogozen.com/wp-content/uploads/2025/01/DreamShaper_v7_Please_generate_an_illustration_of_an_evil_geni_01.jpg

    Mr.unknownとこいつの同盟関係…う~ん、性格合うだろうか…?

    さて、折角BRAVERS EDITION中に出していいのかなって思ったのですが、ちょっと関わらせられたらなっていう願望もありまして、SSを

    • > この世界に安全地帯はないのか!?

      イケメン男子や美少女にとって、地球上のどこを探しても安全地帯はないですね(`・ω・´)キリッ
      特にこの世界の創造神である管理人にとって好みなホワイトカラーのボトムスを着用している青少年は、誘拐・拉致・人質として監禁される危険度が爆増します( ̄ー ̄)ニヤリ
      (逆に言えば管理人の守備範囲外である赤ちゃん~小学校低学年及び中年のオジサンオバサン、高齢者、ブサメンやブスは絶対安全とも言えます(;^_^A アセアセ・・・

      > 女狐三人衆、黒百合姐さん、ビオベミラ様、百合鴉嬢、もうこのまま悪女レディースでユニット組みませんか?

      いいですね、それ。でもこのまま仲間割れしたりしなければいいんですけど…💦

      > 当初は加藤が騙し討ちして詩郎くんを捕まえて、リネアちゃんに魅了(チャーム)をかけさせ、おかめの御前様の情報を聞き出させることも考えてました、その時考えていたのは、詩郎くんの中の邪神の暴走です、さて、管理人様はどうゆう展開にするか、気になりますね~

      加藤氏、そこまで強硬手段を取るつもりだったんですね。ある意味、先に黒百合がリネアちゃんを捕まえてよかったです。黒百合の目的は、おかめ党の遺産である「誘拐帝国建設プラン」の全容を解明してそれを手に入れること。果たしてブラック詩郎はどこまで情報を知っているんでしょうか?

      > Mr.unknownとこいつの同盟関係…う~ん、性格合うだろうか…?

      ご意見ありがとうございます。どうやらMr.unknownが関わっている可能性は低そうですね。しばらく出番のなかったハント星人が再び動き出したのかもしれません。でもそうなると、異星人否定論者の陽平くんがまた発狂しそうだなぁ…_| ̄|○

  2. 旅鴉 より:

    ここは埼玉県の鷺島市、森の中にある小さな小屋、それは羽鳥家が所有している小屋で、昔は羽鳥瑠璃華の親戚の者が猟師小屋として使っていたものだが、今は猟をやめているためサバゲーチーム『ドリュアデス(DRYADES)』の拠点(たまり場)として使っている、チームの者にはそれぞれ合鍵を渡しており、自由に使うことが出来る。
    そしてそこに今、柏葉美佳の姿があった、たった1人で。
    他のドリュアデスメンバーもそれぞれ用事があってここにはいない、それでも用があるわけでもなく、ただ美佳はなんとなくここに足を向けた。

    (私は最近いつもこんな感じ…いつも1人…孤独な気分…)

    美佳が最近感じる憂鬱感、彼女をそんな気分にさせているのは、彼女の周囲の人間達である。

    (音祢さん…いつまであんな男のことを追いかけてるの…?)

    姉のように慕っている先輩、綾塚音祢、彼女の前に行方不明だったおかめ党の幹部、寺瀬詩郎が再び現れた、しかも記憶をなくし今は『ブレイバーズ』なる正義組織のヒーローとして活動しているとのこと。

    (何それ、わけわかんないよ!しかも…)

    その詩郎に会いに音祢はわざわざ滋賀の安土市まで向かった、だがなんと、詩郎の傍には他の女がいたらしい、ちょっとした修羅場だ。

    (もう他の彼女がいるんじゃない、それなのに…音祢さんはその男にまだ執着してる…どうかしてるよ)

    自分が慕う人間が、1人の男に振り回され、また不幸になろうとしている、そのことが美佳をイラつかせる。

    (それに、彩人さん、あなたはどこに向かってるのよ?)

    逢沢彩人、兄柏葉章介の親友で、その正体は謎のヒーロー『エターナルライバル!』ってことになっている…なぜこうなったのか、ちょっと前までは謎の寄生宇宙人『ミラージュX』にとり憑かれていたのだが、そのミラージュXに変身しておかめの御前を道連れに空の彼方へ消えていった…筈だった…のだが…エターナルライバルとしてしれっと戻ってきた、しかもミラージュXでない時は一般人だった筈の彼が、なぜか普通にスーパーパワーを身に付けていた。

    (本当にわけがわからない、どうゆうわけだか今は別のところに住んでるみたいだけど…親御さん心配してないのかな?)

    思わず逢沢家のことを心配してしまう美佳、いや、人の家の事を心配している場合ではない。

    (それよりも問題なのは…ウチの馬鹿兄貴…)

    柏葉章介、柏葉美佳の実兄、逢沢彩人のエターナルライバルにすっかり影響され、力もないくせにコスプレをして『エターナルフレンド』なるヒーローを名乗りはじめたのが、その格好で自分がピンチになったときも助けにきたのだが…勿論大した力もない一般人なため、デコピン一発で倒されるという醜態をさらす、それだけならまだしも、その格好で何を思ったのかブレイバーズの東京事務所に侵入して取り押さえられるといった珍事を起こした、その取り押さえたのが運よく、良く知った仲だった小寺洸介と桜庭陽平の2人だったから良かったものの、他の人間だったら下手すると警察沙汰になりあの格好のまま逮捕され、一族の恥を晒すところだった、その事は両親に知られる事となり家族会議となった、ちなみにその時の衣装は、この小屋の中の箱の中に無造作に放り込まれている。

    (本当にみんな…どうしちゃったんだろ…最近本当に変だよ…なんでこんなにおかしくなっちゃったんだろ…?)

    こうゆう時、いつも相談に乗ってくれるのが大人のお姉さんの羽鳥瑠璃華なのだが、この女は目を離すとすぐにどこかに消える、肝心な時に居てくれない。

    (みんなおかしくなったのってやっぱり、あいつに関わったから?)

    またふとあの男、寺瀬詩郎の顔が頭に浮かぶ。

    (みんなあいつが現れてからおかしくなっちゃったんじゃない、大体私はあいつのこと音祢さんみたいに信用出来ない、あいつ記憶戻ったらまた悪さするかもしれないし、そうなったらまた音祢さんを巻き込むかもしれない、そうなったら…)

    美佳は思わず頭を抱える。

    (彩人さんもお兄ちゃんも…馬鹿だからアテにならないし…どうしたら良いのかな、私に出来ることないのかな?)

    そう言いながら椅子に腰を落として俯く美佳。

    (みんな私の知らないところでおかしくなっていく、このままでは良くないことが起きそう、何とかしなきゃ…)

    そう思ってすぐに、その考えを払うように頭を振る美佳。

    (何を悩んでるのよ私…馬鹿みたい…私なんてただのどこにでもいる中学生じゃない、こんな無力な私に何が出来るっていうの…)

    そう思いながら、なぜか美佳の目から涙が溢れ出てた。

    (でも…やっぱり嫌だよぉ…大切な人が傷付くかもしれないのに、これからもっと悪いことが起きるかもしれないのに、私…何も出来ない…悔しい…)

    美佳は自分でも解るぐらい情緒不安定だった、孤独感と無力感が、思春期で多感な時期の、この少女の心を苦しめていた。

    (私にも…みんなを守れるような力があれば、せめて彩人さんみたいに、例えそれが異星人でもあっても、私に力を与えてくれるなら…って本当に馬鹿か私は、そんな都合の良いことなんてあるわけないだろ何を考えてるんだ、それに彩人さん体を乗っ取られたりと、散々だったじゃん…)

    そう思いながら、美佳は自分の頭をコツンと小突く。

    (本当に馬鹿になっちゃったのかな私…昔はこんなこと考えもしなったのに…)

    そして美佳は頭を抱え、再び顔を伏せる。

    ((お悩みのようだね、お嬢さん))

    突如声をかけられ、体を震わせ驚き、辺りを見渡す美佳。

    ((こっちだよ、こっち))

    それは声と言うよりは、頭の中に直接話しかけられているような感じだった。

    ((君の正面))

    美佳がその声に従い正面を見ると、そこには…

    「…!?」

    思わず絶句した、突如現れたそれは小さな動物だった、それは黒い艶のある毛に、長い耳がついた、キツネともウサギともリスとも判別できない、なんとも言えない奇妙な生物だった、そして額には赤い宝石のような綺麗な角が生えていた。
    その謎の生物は、つぶらな瞳で、美佳の目をじっと見つめていた。

    ((私は怪しい者ではない…って説得力の欠片もないが、少なくとも君の敵ではないよ))

    その獣は、とてもその愛らしい姿から想像出来ないような、渋い年配の男の声で美佳の心の中に話しかけてくる。

    「なななな…なんなの、いったいなんなの!?そっか、これは夢か、いつの間にか寝ちゃってたんだな私?」

    直接頭の中に話しかけてくるこの謎の生き物を目の前にして、現実逃避する美佳。

    ((申し訳ないが、君の目の前にいる私は紛れもなく現実だ))

    「そっか私疲れてるんだ…だからこんな幻覚まで…」

    ((だからこれは…))

    「現実なわけあるか!心の中に直接話しかけてくるようなおかしな生物なんかこの世にいるわけないだろ!」

    自分の頭の中に暢気に話しかけてくる謎生物相手に、思わず声を荒げてしまう美佳。

    ((確かにこの世には存在しない生物と言うのは、あながち間違ってはいないかな、なぜなら私は君たちの言うところの異世界人…まあこの姿だと異世界生物と言った方が正しいか))

    「異世界生物!?」

    そう叫ぶように言いながら、美佳はその獣に訝しむような目を向ける。

    「なにその、最近の流行りに便乗したようなありがちな設定」

    ((それを言われるとまあ…身も蓋もないが、とにかく私はこの世界の者ではない、別の世界からやってきた者だ、名前は元の世界に捨ててきたから、とりあえずは”ブラックカーバンクル”とでも名乗っておこう))

    美佳は小さく深呼吸して心を落ち着かせ、改めてブラックカーバンクルと名乗る目の前の獣を見る、確かに、図鑑をいくら調べてもこんな生物は出て来ないだろう、そもそも頭から宝石の角を生やしてテレパシーで話しかけてくる生物なんてこの世界の生物でなかったら、他に考えられるのは地球外生命体ぐらいだ。

    「でもまあ、私も今まで怪人だの異星人など変なもの色々見てきてるし、今さら異世界生物が出てきたところで驚くことなんてないか」

    そう言いながら、小さく溜息をつく美佳。

    ((理解が早くて助かるよ、まだ若いのに随分と達観してるね~))

    「まあ…色々な目に遭ってきたからね、本当に色々と…」

    そう言いながら、どこか遠くを見つめる美佳。

    ((随分と苦労してるんだね…))

    「普通の人間がおよそ体験しないようなことを色々と…まあそんなことより、その異世界生物がこんな所に何の用?」

    ((それはね、君に会いにきたのだよ柏葉美佳くん))

    「………はぁ?」

    思わず間抜けな返事を返す美佳。

    ((私は君の力になりにきたのだよ))

    目の前の獣の言葉に、きょとんっとした顔をする美佳。

    (え~っと、何を言っているんだこの獣は?そもそも初対面の異世界生物が何で私の名前を知ってるんだ?そもそも力になるって何?獣に力になってもらうことなんてあったっけ?鶴の恩返し的な…いやいや、異世界の獣なんて助けた覚えなんて…)

    美佳は頗る混乱していた。

    ((随分と混乱しているようだね))

    「そりゃするわ!突然現れた異世界生物に力になりにきたとか言われて、はいそうですかお願いしますってすんなり受け入れる馬鹿がどこにいる!」

    思わず声を荒げる美佳。

    ((まあそれはそうだね、だが、君は先程願っていたじゃないか、力が欲しいと…))

    そう言いながら、黒い獣、ブラックカーバンクルは、真っ直ぐな目で美佳を見据える。

    「私の心を…読んだの…?」

    ((聞えたんだよ、君の強い思いがね、そして私にはそれを叶えることが出来る、君の求めている力を与えることが出来る))

    「あなた本当に何者…?」

    ((名無しの黒いカーバンクルだよ))

    そう言いながら獣は軽く尻尾を振った。

    「力を与えるってそもそもどうゆうことよ?」

    ((おやおや、興味を持ってきたかね?))

    「ちょっとその…気になるだけ」

    未だ訝しむような目で獣を見ながら、そう答える美佳。

    ((ならば少しだけその力を君に……おやおや、これはこれは早かったね))

    獣は突如話を止めると、小屋の入り口の方へと目をやる、美佳もそれに釣られるようにそちらに目をやると、そこにはいつの間にか1人の男が静かに立っていた。

    「やっと見つけた、まさかもう接触してたとはな」

    それはくせある黒髪の、スーツを着崩してきた、一見するとガラの悪そうな男だった。

    「この人…誰…?」

    ((追っ手だよ、とある組織のね、彼は私を捕まえにきたのだよ))

    「追っ手…ってなに?悪い組織か何か?」

    ((そうとも言えるかもしれないな))

    そう言いながら、獣は男の方に向き直り、警戒するように構える。

    「お嬢ちゃん、そいつから離れろ」

    そう言いながら、男はゆっくりと迫ってくる。

    「どどど…どうすればいい!?」

    声を震わせ焦る美佳、すると獣はなんと素早い動きで美佳の肩へと飛び乗った。

    「ちょ…何を!?」

    ((集中するんだ、今からあの男を追い払うよ))

    「追い払う!?ど、どうやって!?」

    ((それを今から教える))

    そう言いながら、獣は意識を集中させる。

    (あれ…なに…この感覚…?)

    美佳は自分の身体の中に何かが入ってくるような感覚を覚える。

    ((私と君の意識を今繋げた))

    先程よりも大きく、獣の声が美佳の頭の中で木霊する。

    (意識を繋げた…?)

    ((そう、こんな感じでね))

    獣のがそう言うと同時に、自然と美佳の腕が動き出し、その手の平が迫ってくる男へと向かう。

    「おい、どうゆうつもりだ…いや、お前その娘に何をさせてる!?」

    男が声を荒げる。

    (ちょっと…本当に何をしてるのよ!?)

    ((すまない、ちょっと体を使わせてもらった、だがここからは君の意思だ、さて目の前にいる今君に向かってこようとするこの”悪い組織の男”をどうしたい?))

    そう言っている間に、男は素早い動きで美佳に迫っていた。

    「ちょっと…来ないで!!」

    その言葉と共に、美佳の手の平が光を放つ、そして…

    ドンッ!!

    見えない力が、男を小屋の外まで吹っ飛ばした。

    そして男は、森の方まで飛ばされ地面に転がる。

    (今のは…何…?)

    1人の男を数mも吹っ飛ばしたこの力に、呆然して驚く美佳。

    ((君に私が貸し与えた力だよ、君たちの世界で言うところの『魔法』というやつかな))

    (魔法…?)

    ((そう、そうだ、もう1つ言い忘れていた、私はブラックカーバンクルになる前は魔法使いだったのだよ))

    そう言いながら、つぶらな瞳を美佳に向ける獣、その顔はどこかドヤってるようにも見えた。

    (うん…なんか色々と聞きたいことは多いけど、とりあえず今の男の人大丈夫?)

    ((今の君には〇意はなかった、だったら大丈夫じゃないかな…?))

    そう暢気に答える獣。

    「加藤さん!?」

    小屋の外から女の叫ぶような声が聞こえてくる。
    美佳が獣を肩に乗せたまま外へと出て見ると、銀髪の西洋人の女が、倒れた男のもとへ駆け寄っていた。

    「大丈夫ですか、加藤さん!?」

    銀髪の西洋人の女が、地面に倒れている男の前に屈みこみながら必死に声をかけていた。

    (もう1人いるんですけど…なんかその…凄く綺麗なお姉さんが…)

    ((彼女も追っ手だ))

    (え…悪い人に見えない…)

    ((君が相手した悪の組織にも、優しそうな綺麗なお姉さんが居たのではないかな?))

    (あなたは本当に私のことどこまで知ってるの?)

    ((それは後でゆっくり話すとして、まずは彼女もなんとかしないとね))

    獣が言葉に合わせるように、女がすっと立ち上がると、何か棒状のようなものを取り出し、美佳に向かってそれを向けた。

    (あのお姉さんはいったい何者でしょうか…?)

    ((魔女だそうだ、この世界にも存在するとは、驚きだったがね))

    そう暢気に答える獣。

    (魔女!?)

    驚く美佳に、((今さら何を驚くのかね?))と呆れたように答える獣。

    「貴女がやったのですか…いえ、違いますね…あなたですね”ブラックカーバンクル”」

    (どうしよう?向こうも魔法を使ってこようとしてるよ)

    やや焦り気味の美佳に、獣は落ち着いた口調で答える。

    ((どうしたら良いと思う?))

    (だからそれを聞いているんだけど!)

    ((簡単じゃないか、魔法を使わせなければ良い))

    (だからどう…)

    美佳は何かを思い出したかのように女に手をかざすと、声を張り上げて言った。

    「止まって!!!」

    その瞬間、女の体は、金縛りになったかのように動かなくなった。

    「……っ」

    女は懸命に声を出そうとするが、それすら叶わない。

    ((正解だ、君は今私の魔法を君の言葉で使っているのだよ、君達で言うところの変換器を使ってこちらの世界の形に変えてるようなものだ、今君と接触して、同調したからこそ、これが出来ているわけだが))

    (これが…あなたが私に与えたいとか言ってた力…)

    ((いいやこんなものではないよ、これはただの試供品みたいなものだ))

    (これで試供品…?)

    ((そうだ、君にはまだ…))

    獣が更に美佳に何か伝えようとしたそのとき、すぐそばで何者かの気配を感じる。

    「何を念話でこそこそ話してるんだ?」

    美佳と獣が声のする方に目をやると、先程吹っ飛ばした筈の男が立っていた。

    「噓っ!!まだそこで倒れてたはずじゃ!?」

    ((ぬかった!この男、幻術使いだったか!!))

    男は銃のようなものを美佳に向ける、慌てて男の方に手を向け叫ぼうとする美佳、だが今度は男の方が早かった。

    バシュ!という音とともに、銃のようなものから網が飛び出し、美佳と獣をまとめて絡めとり動けなくした。

    「はい捕獲完了…まったく…余計なものまで捕まえさせやがって…」

    ((この扱いはあんまりじゃないか…))

    猫用のゲージに入れられた獣は、テレパシーで男に文句をたれる。

    「黙れ畜生が、脱走したかと思えばでめぇは…まだこんな能力を隠し持ってやがったのか、ふざけやがって!」

    「加藤さん落ち着いてください、柏葉さんが余計に怯えちゃうじゃないですか」

    そう言いながら、銀髪の女が加藤と呼ばれた男を宥める。

    「リネア、お前はもう大丈夫なのか?」

    「ええ、思ったより持続時間のある魔法ではなかったようで、もう麻痺も残ってません」

    そう言って、リネアと呼ばれた女が自分の手を軽く動かしてみる。

    「それよりも加藤さんの方は大丈夫ですか?」

    「ああ、ちょっとばっかり勢いよく吹っ飛ばされたが、どうってことない…だからもう気にしてないから、落ち着いて話しを聞いて貰えると嬉しいんだがな、柏葉美佳さん?」

    加藤は、後ろ手に縛られ猿轡をされた美佳の方へ目を向ける。

    「んんー!んんんー!」

    「はいはい落ち着いてください、今猿轡外しますから」

    そう言いながら、リネアが美佳の猿轡を外す。

    「ぷはぁ!!はぁ…はぁ…あなた達どこの悪い組織の人達なの!?私をどうするつもり!?」

    「悪い組織って…」

    リネアはジト目で獣を見下ろす。

    「てめぇは本当に…この娘に何を吹き込みやがった…」

    加藤は獣を睨みつける。

    「とりあえず…事情説明するから縄解くぞ…さっきみたいに暴れるなよ」

    その言葉に美佳は小さく頷いて応える。

    「え~っと…君は柏葉美佳さんだよね?」

    「はいそうです…どうして私の名前を…?」

    縛られていた手をさすり、警戒するような目を向け、加藤に答える美佳。

    「俺は、こうゆう者だ」

    「私はこうゆう者です」

    そう言いながら、2人は美佳に名刺を手渡す。

    「アスカロン…財団…?」

    「決して悪の組織ではないよ、むしろ逆で、正義の支援者なんだけど…」

    そう言いながら「ネットで情報確認してもいいぞ」とスマートフォンを指さす加藤。

    「そして君のことをなぜ知ってるかって言うとだな、ほら、君の周りの人間がおかめ党と、特に寺瀬詩郎との関りが深いだろ」

    「寺瀬…詩郎…」

    その名前を聞き、美佳の表情が一瞬険しくなる。

    「まあその顔を見る限りよく知ってるってようだな」

    「ええ…一度捕まったこともありますから、今はブレイバーズって組織で正義の味方やってるんでしたっけ?」

    やや不機嫌そうな口調でそう返す美佳。

    「ほぉ…そこまで既に知ってるんだな」

    そう言いながら、意味ありげな笑みを浮かべる加藤。

    「それで私達を監視してたのですか!言っておきますが私達はおかめ党とは関係ありませんから!なぜか寺瀬詩郎が勝手に音祢さんに絡んできただけですし!なんであんなのが私達に関わってきたのかこっちが聞きたいぐらいで…」

    そう声を荒げる美佳を、手で制する加藤。

    「知ってる、君たちはどちらかと言えば巻き込まれた側の被害者だ、逢沢彩人も綾塚音祢も寺瀬詩郎に関わって人生狂わされた人間だ、ついでに君の兄さんもな、特に逢沢彩人の場合はミラージュ星人とまで関わってるからより厄介なことになってるが」

    そう言って肩を竦める加藤。

    「おかめ党は壊滅したってことにはなっちゃいるが…どうやら地下に潜って名前と形を変えて今でも活動しているみたいだ、寺瀬詩郎も記憶をなくして正義の味方なったとか言ってやがるが、信用しちゃいねえ、いつ完全に記憶が戻って悪党に戻るかわかったもんじゃない、だから特に関りが深かった君達のことが心配で見張ってたって訳だ、また奴が君らにちょっかいかけてくるかもしれないからな、現に既に君以外の人間とは寺瀬詩郎は接触してるみたいだしな」

    「そうだったんですね…、それなのに悪の組織とか言っちゃってスイマセン…」

    「いいんですよ、この人いつも悪人に見られますから」

    申し訳なさそうに頭を下げる美佳に、リネアは笑いながらそう返す。

    「悪かったな悪党面で…」

    不貞腐れたようにそう言い返す加藤。

    「ところで…この…ブラックカーバンクルって本当に…何者ですか…?」

    そう言いながら、猫ゲージで丸まってる黒い獣”ブラックカーバンクル”の方に目をやる美佳。

    「長い話になるが…聞くか?」

    加藤の言葉に、美佳は小さく頷いて応える。

    加藤の話では、この獣、ブラックカーバンクルは、アスカロン財団の遺跡調査班が、新たに発掘した遺跡の中で眠っていたのを発見したらしい。
    最初からテレパシーで会話は出来たが何を言っているのか不明だった、しかしすぐにこちらの言葉を覚え、会話出来るようになったそうだ。
    そこで自分はブラックカーバンクルだと名乗り、異世界から来た者だと言った、そしてカーバンクルになる前は人間の魔導士だったと、だが訳あってあちらの世界で追われる身となり、そして魔法によってこちらの世界へのゲートを開き逃げてきたと、そして永い眠りについていたところで、遺跡調査班に発見されたとのことだ。
    遺跡調査班が日本支部の人間だったことや、異世界のことを研究しているちょっとおかしな学者が日本にいることもあって、この日本に来たのだそうだ。
    当初から随分と協力的で友好的だったこのブラックカーバンクルだが、実はかなりの曲者だった。
    こちらの歴史や文化など数多くの知識を瞬く間に習得し、その知能の高さを見せつけると、更にその愛らしさと気さくさでスタッフ達とも直ぐに仲良くなり信頼を得た。
    だが、この生物には最初からサイコメトリーや、魅了(チャーム)などの、精神系の超能力や魔法が全く効かなかったのだ、本人曰くそれも自分の特性ということだが、そのおかげでこのブラックカーバンクルの考えを知ることが出来なかった。
    実はこのブラックカーバンクルは、相手を催眠状態にして意のままに操る魔眼の能力を隠し持っていた、それを使いスタッフ達を操り、アスカロン財団の機密情報を盗み出し、更にアスカロン財団の研究施設から脱走したのだった。

    「それで、手当たり次第に見つけた人間を操りながら、ヒッチハイクやキセル乗車繰り返し、ここまで来やがったんだよこいつは!」

    そう言いながら、黒い獣、ブラックカーバンクルが入った猫ゲージを激しく叩く加藤。

    ((まさかこんなにあっさりと追いついてくるとは、君らにも感服するよ…))

    「うちの組織の捜索能力とこの世界の科学力舐めんなよ、異世界畜生が」

    「まあ、私の魔法も少し使いましたけどね、総合力の勝利です!」

    加藤の言葉に続くようそう言いながら、ややドヤ顔を見せるリネア。

    ((単体では勝てないか、やれやれ…))

    ブラックカーバンクルはやや不貞腐れたように伏せながら溜息をついた。

    「さてと、日置のオッサンに連絡して、撤収するか、迷惑かけたなお嬢ちゃん」

    そう言いながら、懐からスマートフォンを取り出す加藤。

    「今回の件はくれぐれも…、内密にお願いします…」

    そう言いながら、美佳に対して深々と頭を下げるリネア。

    「大体お前の目的は何だ?何の目的でこの娘に近づいたんだ?」

    「私もそれが知りたいです」

    ((………))

    加藤とリネア、2人の問いに何も答えないブラックカーバンクル。

    「まあいい、とりあえず今度はもっと監視を厳しくするから覚悟しとけよ、まったく…とんだ醜態だな、こんな危険生物を相手に油断して、逃がしちまうなんてな」

    「まあ、可愛い見た目に騙されましたね、でもテレパシーの声は渋いオジサンですけど」

    加藤の言葉にクスリと笑って返すリネア。

    (結局…この獣…ブラックカーバンクルに…私は騙されてたのかな…?)

    ((そう思うかね?))

    「…ッ!?」

    突然心の中に声が響き、思わず声を出しそうになった美佳。

    (また心を読んだの!?)

    ((すまない、君の心が惑わされているのではと思い、つい心を読んでしまった))

    (そうゆうとこだよ!てゆーか本当に嘘つきじゃんアンタ!何が悪の組織の人間よ、私を守ろとしてくれた人に、私、酷い事しちゃったじゃん!)

    ((悪人扱いしたのは悪いと思ってはいるが、追われていたのは事実だ))

    (だからって吹っ飛ばすことなかったじゃない!)

    ((それをしたのは君だろ?))

    (そうさせたのはアンタだ!)

    思わず声に出しそうになるのをぐっと堪えながら、ブラックカーバンクルに心の声で文句を言う美佳。

    ((そうだな、済まなかった、君に乱暴なことをさせてしまった、それについては謝罪する))

    そう言いながら、ブラックカーバンクルはゲージの中から美佳に対して頭を下げる。

    ((それでは、先程の話の続きといこうか))

    (え…まだ何か?)

    ((だから、この2人が言っていた、君に会いに来た理由についてだよ))

    ブラックカーバンクルの言葉に、美佳は思わず加藤とリネアの方を見る、2人はお互い何かを話していてこちらの方を見ていない。

    ((大丈夫だ、この会話は君と私との間だけだ、2人には聞かれてはいない、安心したまえ))

    そう言いながら、軽く片目を瞑りウインクみたいなことをしてくるブラックカーバンクル。

    ((私がなぜ態々施設を脱走して、こんな所まで君を探して会いに来たと思っているんだ?))

    (それって…さっき言ってた、私に力を与えるとか言ってたやつ?それ本当なの?)

    ((ああそうだ、その言葉には偽りではない、本当に私は君の力になりにきたのだよ))

    (そのために私を探して…それってなんで?なんで私なの?)

    改めてその疑問をブラックカーバンクルにぶつける美佳。

    ((それはね、君が選ばれた人間だからだ))

    (はぁ…?)

    ブラックカーバンクルの言葉に、思わず眉をひそめる美佳。

    ((まあそんな反応になるだろいうね、解るよ…))

    (いちいち胡散臭いよ本当にアンタ…)

    ブラックカーバンクルを見下ろし、思わずため息を漏らす美佳。

    ((まあ正確に言うと、アスカロン財団のデータベースから君を見つけた、他にも興味あった子はいたが、私は君に一番惹かれた、その若さでとんでもない経験をいくつもしていることに驚いたし、何よりも君の周りの人間が面白い、ある意味運命に選ばれているのではないかと思った、そしてデータに載っていた写真とやらを見て、良い顔してるなって思った、これは直感だ))

    (何だか最後のはいい加減で曖昧だね)

    ((だがその私の直感は、昔からよく当たるのだよ、そして…))

    ブラックカーバンクルは、美佳の目を真っ直ぐに見ながら言った。

    ((それは今回君に会って、確信に変わった、君は私を求めている、そして君こそが私の求めていた人間だということがね))

    (どうゆう根拠があって?)

    ((君は今の状況を憂いているだろ、これから迫りくるかもしれない脅威に、そしてそれに対抗するための力を欲しがっている、そしてそれは自分自身の為ではなく自分の大切な人を守るための力だ、本当に君はとても良い子だ)

    (そうやって私の心を読んだんだよね、この覗き魔!)

    心の声で激しく抗議する美佳。

    ((それは申し訳なかった、君の人となりをじっくり見極まるつもりでいたが、運よく君の思いが聞けたのは良かった))

    そう話すブラックカーバンクルを、呆れた表情で見つめる美佳。

    ((それで…ここまでこんな私のおかしな話を聞き続けてくれていると言うことは、私の話に興味があると判断して宜しいかな?))

    (うん、そろそろ本題に入ってくれたら嬉しいかな)

    美佳の言葉に、小さく頷き((了解した))と答えるブラックカーバンクル。

    ((まず、私と契約して欲しいのだが))

    (あ~、やっぱりか…)

    そう言いながら、頭を抱える美佳。

    ((その反応か…君たちはどうもこの”契約”という言葉にネガティブなイメージを持っているみたいだな))

    (当然でしょ、いや~、話が上手すぎると思ったのよね、何、結局何かを要求してくるんでしょ?)

    そう言いながら、ブラックカーバンクルを睨みつける美佳。

    ((いやいや、ちょっと話を聞いてくれ、確かに契約を交わすと言うことは、こちらも君に求めるものがあるということだ、それは認める))

    (ほらね、で、何が欲しいの、魂とか?)

    ((違う、私は悪魔ではない、そんなものはいらない、ただ…君に求めるものは…))

    ブラックカーバンクルは小さく首を振った後、再び真っ直ぐ美佳の目を見つめながら言った。

    ((私の弟子になって欲しい))

    (どうゆうこと?)

    頭に?マークを出しながら首を傾げる美佳。

    ((文字通りの意味だよ、私と師弟関係を結んで欲しい、私の力を受け継いでほしい、それだけだ))

    (それだけ?)

    ((それだけだ、そしてそれが私の望みだ…))

    そう言いながら、どこか悲し気に顔を伏せるブラックカーバンクル。

    ((私はあちらの世界で失敗したのだよ、弟子を育てるのにね…その挙句に、こんな姿になってこの世界に逃げてくることになってしまった…))

    (何があったの…?)

    ((話せば長くなるのでね…もし君が契約してくれるならば、いずれ話すとしよう))

    そう言って、ブラックカーバンクルは顔を上げ、再び強く美佳の目をみた。

    ((今度こそ失敗したくない、そう思ったよ…そんな時に君と出会えた、見つける事が出来た、大切な人を助けたい、そう思いながらそれが出来ない無力な自分に悔し涙を流せる、そんな優しい君のような子に出会えた!そして私は、私は、そんな子に…この力を託したい!)

    今までよりも、より強い心の声が美佳の心に響く。

    (ねえ?)

    ((なんだい?))

    (私で本当に、良いの?)

    美佳は改めて、ブラックカーバンクルに訊ねる。

    ((ああ、問題ない、むしろ君が良い、だが君が断るのであれば仕方ない…また他を探すしかない…))

    (私は、ただ力を求めているだけの危険な人間かも知れないよ)

    ((だったらまた私の見る目がなかっただけだ…だが、私は君を信じたい))

    そう返すブラックカーバンクルに、再び美佳は訊ねる。

    (本当に…あなたが授けてくれる力で、私の大切な人を守れるの?助けられるの?)

    ((ああ、約束する))

    美佳は小さく溜息をつくと、ブラックカーバンクルの目を見つめ言った。

    (騙されてあげようか、あなたに?)

    ((人聞きの悪いことを言うな君は))

    そう言いながら、ブラックカーバンクルの表情はどこか笑っているように見えた、そして美佳もまた小さく笑う。

    (力を…貸してくれる?)

    ((喜んで))

    ブラックカーバンクルは小さく頷いた。

    (私は…あなたと契約を交わします、ブラックカーバンクル)

    その美佳の言葉と同時に、美佳の目の前に契約書のような物が現れる、それは宙に浮きながら淡い光を放っていた。

    ((それの署名のところに、サインを))

    (どうやって?)

    ((指でなぞるだけでいい))

    美佳がその署名欄を指でなぞると、そこだけ色が変わった。

    (これ何語で?)

    ((日本語でいい))

    その言葉通り、美佳は署名欄に自分の名前を書いた、柏葉美佳と。

    ((あと1つだけ頼みを聞いてくれるかい?))

    (ちょっと!?書いた後にそれ言うの反則じゃない!)

    そう文句を言う美佳に、落ち着いた言葉で返すブラックカーバンクル。

    ((君の大切な人間を助けるそのついででも良い、他に…助けを求める人間がいたら一緒に救ってほしい))

    美佳は小さく頷く。

    (それがこの力を授かる代償か…了解!)

    本当になんでこんなのと、こんな怪しい奴と、契約なんて交わしたのだろう、思いはただ1つ、大好きな大切な人達を守りたいただそれだけ、それだけだが、ちょっと軽率すぎたのでは、今さらながらそう思う、初めて会ったこの怪しい獣に、弟子が欲しいとか意味不明の言葉を言うこの獣の、ちょっとだけ見せられただけのあの力を信じて…だが、このブラックカーバンクルが、悪い奴には思えなかった、それは曖昧な思いだが、この獣、ブラックカーバンクルの言葉を借りるなら、それは直感と言うやつだろう。

    • 旅鴉 より:

      「いや本当に…迷惑かけたな柏葉美佳さん、こいつが何を目的で君に近づいたのかは知らんが、それについてじっくりと聞いといてや…」

      加藤は思わず言葉を詰まらす、突然、柏葉美佳が、目の前の何もない宙を指でなぞり始めた。

      「何をしている…?」

      加藤の声が届かないのか、美佳はただひたすら宙を指でなぞっていた。

      「何…これは…なんで柏葉さんから…強いマナが…」

      リネアが呟くように言った。

      「マナ!?あの魔法の源みたいなあれか?」

      「はい、それが彼女の手から…」

      そのリネアの言葉に応えるかのように、美佳の手の中に赤い大きな宝石が現れる。

      (それが、契約の証だよ、我が弟子、柏葉美佳)

      「これが…契約の証…あなたと私を繋げるもの…あなたが私に与えた力…」

      そう呟くように美佳は言う、その言葉を聞き、加藤はブラックカーバンクルを睨みつける。

      「おい…彼女の言っていることは、どうゆうことだ?説明しろ!」

      ((説明するからまずは、この狭いところから出してくれないかね加藤君))

      「なん…だと…契約…?」

      表情を引きつらせながら、ゲージから出てきたブラックカーバンクルと、申し訳なさそうな顔をする美佳を交互に見る加藤。

      「な…なんてことを…あなた達はいったい…」

      その横で声を震わせるリネア。

      「解っているのか…何をしたのか、お前らは…」

      ((ああ、私は彼女と契約して師弟関係を結んだ、彼女はもう立派な魔法使いだ))

      「ふざけてんのかてめぇ?」

      ((ふざけてはいないな、大真面目だ))

      「なお悪いわ!」

      そう声を荒げる加藤に、肩を震わせ驚く美佳。

      「お前は何をやったか解ってるのか、1人の少女を異能者にしたんだぞ、何でもない普通の女の子をだ!」

      ((ああ、先程説明した通り、私は彼女の望みを叶えた))

      「何が望みだ!人の弱みに付け込んで騙しただけだろうが!」

      ((人聞き悪いな、騙したなんて))

      「てめぇの思い通りになる駒を作っただけだろうが、またそうやって操って何をさせるつもりだ?」

      ((人助けだ))

      「少女1人の人生を狂わせようとしてんのに、何が人助けだ!」

      そう吐き捨てると、加藤は懐から銃を取り出し、その銃口をブラックカーバンクルに向ける。

      「加藤さん!?」

      「…!?」

      驚き声を上げ止めに入ろうとするリネアと、突然のことに言葉を失う美佳。

      「もう埒あかねえ、いいから、この娘との契約を破棄しろ、今すぐにだ!」

      だが、ブラックカーバンクルは銃口を突きつけられても、怯えることなく平然とした目で加藤を見つめていた。

      ((拳銃か…指を少し動かすだけで相手を貫通する強力なこの世界の武器だね、科学というものが作り出した魔法のような凶器だ))

      そう言いながら、逆に銃口に顔を近付けるブラックカーバンクル。

      ((だが、君は最初に使ったのは網が飛び出るものだった、手っ取り早く私を無力化するなら最初からそれを使えば良かったのに、それは上司から無傷で私を捕まえてこいと言われているのからではないかね?))

      「ああ、だが、今はそんな命令どうでもいいわ」

      そう言いながら、怒りに満ちた目をブラックカーバンクルに向ける加藤。

      ((なるほど、覚悟を決めてるわけか、だが…異世界の生物であるこの私にはたしてこの世界の常識が通用するのかね?君たちの言う急所が私にとっての急所とは限らないよ?それか、まだ私は特殊能力を隠し持っているかもしれない、その弾丸がそのまま君に跳ね返ってくるかもしれない))

      「ここにきてはったりか、いや本当にそうだとしてもとりあえず試してみるさ、生憎俺がやられても、頼れる相棒がもう1人いるからな」

      そう言いながら笑みを浮かべる加藤。

      ((そうか…ならもう1つの可能性、今、私は契約によって彼女と、柏葉美佳と繋がった、その意味は解るかね、それは意識、精神から繋がっていることを意味している、そして全神経もまたしかりだ…っと言ったらどうする?賢い君ならその意味…解るだろ?その弾丸が私の頭を貫通するとしたら、その痛みは…もう1つどこへ行くのだろうか?))

      「この野郎…」

      加藤の銃を持つ手が怒りで震える。

      ((鉛の弾が頭を貫通して行く痛みとはどんなものだろうか?さて…はったりかどうか…試してみるかね?))

      「この腐れ畜生が!」

      そう吐き捨て、銃を懐にしまう加藤。

      ((まあそもそも、契約を破棄しようにも、私だけの判断じゃ無理なのだが))

      そのブラックカーバンクルの言葉に、加藤は美佳の方へと目を向ける。
      やや怯えた目で加藤を見つめる美佳、加藤はその肩を強く掴みながら強い口調で言った。

      「今すぐ契約を破棄しろ!」

      美佳は震える声で答える。

      「嫌です…」

      「なんでだ!?」

      更に強い口調で迫る加藤。

      「加藤さん落ち着いてください、そんなに怒った言い方すると…」

      「ちょっとリネアは黙ってろ!?」

      声をかけようとするリネアを制しながら、再び美佳に向き直る加藤。

      「自分がやってること解ってるのか?」

      「解ってます、私…多分…普通じゃなくなっちゃったのかなってことは…」

      美佳は目に涙を浮かべながら、上目遣いに加藤を見る。

      「でも…普通だと…みんなを守れない…だって…加藤さん…言ったじゃないですか、おかめ党はまだ存在してるって、寺瀬詩郎は危険だって、また音祢さん達が危険な目に遭うかもしれないって…」

      「だからって、なぜ君が守る必要がある、君もどちらかと言えば守られるべき対象だ、相手するのは俺達であり君ではない!」

      「でも今の私には力がある、みんなを守れる力を与えられた、だから…」

      「思い上がるな!ちょっと力を手に入れたぐらいの素人に何が出来るって言うんだ!」

      「で…出来るもん…私だって、今までだって…危ない目に遭ってきたけど、何とかやってきたもん…ひっく…ぐすん…」

      「加藤さん!!」

      とうとう本気で泣きだした美佳を見て、傍で見ていたリネアもそろそろ本気で加藤に対して怒りだした。

      ((いたいけな娘を泣かすとは酷い男だ…))

      「黙れ畜生が…スマン、ちょっと言い過ぎた…」

      加藤は、美佳の肩にかけていた手をそっと下した。

      「だが、強すぎる力ってのはその人間を狂わせる、だから迂闊に手にしちゃいけないもんなんだ…」

      「でも…加藤さんも、リネアさんも、凄い力持ってて、それを使いこなしてるんでしょ?」

      美佳の問いに、加藤はやや難しそうな表情で答える。

      「俺達のは昔から修行をして得た力だ、急に手に入れたようなものじゃない、それに、この力に俺達の運命も振り回されてきたんだ…」

      そして加藤は、今度は優しい口調で美佳に言った。

      「だから、そんな力なんてそいつに返して、普通に戻れ」

      だが、美佳は首を横に振った。

      「私は…やっぱり大切な人を守りたい、それにブラックカーバンクルと約束したんです、この力で助けを求める人を救うって」

      その言葉に、加藤は困った表情を見せながら言った。

      「頼むから、君みたいな子供が…そんなことを言わないでくれ、子供を守るのは俺達大人の仕事だ…君みたいな若い娘が、大人より前に出て戦うような状況なんて間違ってるだろ…」

      そう言いながら、唇を噛みしめる加藤、その表情はとても辛そうに見えた。
      流石に美佳も悪いことをしてる気分になった、しかしそれで自分の決意を変えるつもりは無かった。

      「ごめんなさい…」

      「いや、悪いのは俺達だ…こんなことに巻き込んでしまったのはこっちのミスだからな、だが…やっぱり認められない」

      そう言いながら申し訳なさそうに俯く加藤。

      それをじっと見ていたリネアが、首を傾げ考え込む。

      (なんだろう…この既視感…)

      その時、リネアはあることを思い出す。

      (ああ、これは、あの時の光景だ…)

      リネアは小さくポンっと手を叩く。

      「加藤さん」

      「なんだリネア…」

      何だか疲れたような表情でリネアに振り向く加藤。

      「これ無理ですね、彼女は、昔の、あの時の私と同じです!」

      「昔の…ああ、あの時の…どおりで、なんか似たようなシチュエーションあったなと…嫌な事思い出させやがる…」

      そう言いながら頭を抱える加藤、それを見ながら訳もわからずきょとんとした顔で2人を見る美佳。

      「ええ、私がライトシーカーに入りたいって言った時、今回みたいなあなたは怒りながら猛反対して私を止めてましたよね」

      「ああ、そしてお前も泣きながら俺に詰め寄ってたよな…」

      「懐かしいですね~」

      「思い出したくもない!」

      そう言いながら大きなため息を吐き出す加藤。

      「柏葉美佳さん」

      「は…はい!」

      急にリネアに名前を呼ばれ、直立不動になりながら返事をする美佳。

      「ちょっと力を見せてください」

      突然そんなことを言われて、どうしていいのか分からずあたふたする美佳、そんな彼女にブラックカーバンクルが声をかける。

      ((変身だ美佳))

      (変身!?)

      ((そのルビーを使うことで私と同調し、理想の魔法使いになることが出来る、そう、即ちそれは変身(メタモルフォーゼ)だ!!))

      (え、なにそれ、そんなこと全然聞いてなかったんだけど、まずそれを教えてよ、と、とりあえずどうすんの!?)

      ((落ち着きたまえ、そんなに難しいことではない))

      わたわたする美佳に冷静になるように諭しながら、

      ((まず君がなりたい魔法使いの姿を思い浮かべて、思いが強ければより具体的な衣装が出来上がるが、今はとりあえずは適当に思いつく魔法使い像で構わない、その思いをそのルビーに込めるんだ))

      言われた通り、手の中の大きなルビーに力を込め、自分が魔法使いになる姿を思い浮かべる美佳、すると美佳の体が光り輝き、そしてその姿はフリルのついたスカートを穿いた三角帽子の魔女っ子へと変わった。

      「なんだ…こりゃ…?」

      「変身しましたね…」

      突然美佳の体が光り輝いたかと思ったら、今まで来ていた服がなくなり、代わりに魔法使いの服を着た美佳が現れた、それを見てあっけにとられる加藤とリネア。

      ((よし、上手くいったな、今度は適当な魔法を使って何かしてみよう、そうだな…))

      ブラックカーバンクルは器用に前足を動かし、エアガンの射撃用に置いてある空き缶を指した。

      ((とりあえずあれに魔法をぶつけてみよう))

      (何を撃てば良いの?)

      ((それも思いつくもので良い、これからは私の中にある魔法を変換して君の独自の魔法に作り変えるつもりだが、とりあえず今回は…そうだな、光の矢でも撃ってみようか))

      (うん、わかった!)

      美佳は心の声で答えると、すっと空き缶に向かって自分の手を向ける。

      「光の矢よ!」

      美佳がそう叫ぶと、手の平から光る矢が飛び出し…

      カンッ!!

      甲高い音と共に、その矢は空き缶を貫通した。

      「……何これ…これ私がやったの…?」

      震える声でそう言いながら、自分の手を見つめる美佳。

      「最初からこれぐらい魔法が使えるなんて凄いですね」

      そう純粋な感想を述べ、小さく拍手をするリネア。

      「こんなん最初喰らってたら、痛いじゃ済まなかったな」

      そう言いながら、光の矢を受けた空き缶を手に取り、その穴を確認する加藤。

      「変身してからの魔法使いになるこのスタイル…そして柏葉さんのその年齢から導き出される答えは…これって、魔法少女ですね!」

      そう言いながら、指を立て、どこか楽しそうに笑うリネア。

      「魔法少女!?」

      そう言われて驚く美佳。

      ((そうか…魔法使いではなく、この世界のこの国では、このスタイルはそうなるのか、その発想はなかったな!))

      ブラックカーバンクルは、皆に聞こえるように心の声を響かせる。

      「なんだか嬉しそうだなリネア…」

      そう言う加藤に、リネアは弾むような声で答える。

      「ええ、私は魔女ですが、この国の漫画やアニメで出てくるような魔法少女って可愛くて素敵で、私憧れてたんですよ、ただアルマにそれ言ったら『18歳は既に適齢期過ぎてるって』酷い事言われましたけど…」

      そう言って頬を膨らませるリネア。

      「でも、その魔法少女が生まれる瞬間に立ち会えるなんて感動ですね!」

      そう言いながら、目を輝かせ、美佳を見つめるリネア。

      「それはいいが、これは立派な兵器となりうる人間が出来上がってしまったってことだぞ」

      そう厳しい口調で言う加藤に、リネアは「その通りです」と言って返すと、真剣な表情に戻りながら美佳に訊ねる。

      「柏葉美佳さん」

      「はい!」

      背筋を伸ばしながら返事をする美佳。

      「貴女はこの力を大切な人を守るために使うって言いましたよね、約束は守れますか?」

      「はい!」

      美佳ははっきりとした声でそう答える。

      「そして、この力を助けを求める人のために使うって言いましたよね?」

      「はい言いました、私はこのブラックカーバンクルにそう誓いました!」

      リネアの問いに、美佳は迷うことなくそう答えた。

      「ならば、あなたは正義の味方として生きていく覚悟はありますか?」

      リネアの言葉に美佳は少し迷った、だがすぐに覚悟を決めはっきりと答えた。

      「はい!私…この力で悪い人から、多くの人を助けたいです!」

      「おい!」

      美佳に声をかけようとする加藤を制し、リネアが美佳に言う。

      「貴女の意思は解りました…ただ、これから貴女は我らがアスカロン財団の監視下に入ります、それだけの力を持った貴女を放置するわけにはいきませんから」

      ((まあ…そうなるか、確かに我々は君達にとっては危険な存在にもなりうるからな)

      そう言いながら((いいかね?))っと美佳に問うブラックカーバンクル、それに対して美佳は小さく頷く。

      「ですが、貴女は我々が望んでいた存在、スーパーヒーロー…いえスーパーヒロインとなりました、ですから貴女はこれから我々の保護対象であり支援対象にもなります!」

      そうはっきりと言いながら、リネアは美佳に向かってすっと手を出した。

      「アスカロン財団はこれから貴女の協力者となります、これから共に悪に立ち向かっていきましょう!」

      一瞬戸惑いながらも、その手を握る美佳。

      「わ…私こそ、よろしくお願いします!」

      「おいリネア、お前、何を勝手に…」

      「もうこうなってしまっては仕方がないでしょ加藤さん、この人達は私達が何を言っても勝手にやりますよ、それよりも私達の目に届くところにいて貰ったほうが助かるでしょ」

      そう言いながら未だ不満が顔の加藤に笑いかけるリネア。

      「ああ~もうどうなったって知らねーぞ!」

      「その時は私が責任取ります」

      「馬鹿ぬかせ!」

      リネアの言葉にそう吐き捨てながら加藤は言った。

      「そん時は一蓮托生だ」

      そして加藤は、頭を掻きながら考え込む。

      「まずどうすっか…とりあえずレイチェルのお嬢に連絡して対応を仰ぐ所からだな、それからうちの会長がどう動くか…それも問題だが…とにかくもう、こうなったら腹くくるしかねーかな」

      そう言いながら、美佳の顔を見る加藤。

      「本当に良いんだな?これから本当に大変だぞ」

      「はい、何だか話が大きくなっちゃいましたけど、こうなったら私も覚悟を決めます!」

      そう言って、真っ直ぐと加藤の目を見る美佳。
      その目を見て、加藤もまた覚悟を決める。

      「了解した、これからはもう1人の戦士として扱うからな、いいな」

      「はい!」

      美佳ははっきりとした声でそう答えた。

      ((君たちが私達に協力してくれるということなのか?))

      「はい、そうなりますね、だから私達の記憶を消そうとか考えないでくださいね」

      そう言いながらニッコリとブラックカーバンクルに微笑みかけるリネア。

      「言っておくがお前のためじゃねーからな、大体こうなっちまったのもこっちに責任ある、お前って危険生物を逃がしてしまった事だ、だからこの責任はアスカロン財団がとらさせて貰う」

      ((そうか…だが…ありがとう))

      ブラックカーバンクルは2人に対して深々と頭を下げる。

      「有難う御座います!」

      そして美佳もそれに習うように頭を下げた。

      「さて、まずは、呼び名も決めないとですね、『魔法少女ミカ』ってそのまま使うのはあまりよくないでしょ、変身した後は正体とか隠せるのですか?」

      リネアの問いに、ブラックカーバンクルは頷きながら言った。

      ((認識阻害魔法は変身と同時にデフォルトでかかるようになっているから大丈夫だ、素顔のまま晒したとしても身内ですら彼女だと気付くことはない、変身する時と解除する時にだけ気を付ければ問題はない))

      「それを聞いて安心しました、ならば名前だけを気を付ければ良いですね、そのまま使わなければ問題なさそうですが、さてどんな名前にしましょうか?」

      そう言いながらどこかウキウキしているリネア。

      「そこは悩むところですね~」

      そう言いながら腕を組み首を捻る美佳。

      「これ、多分皆に知れ渡り色んな所で語られるかもしれない名前だからな、慎重に考えてつけろよ、お前の兄貴とその友達みたいにエターナルなんとか…ってのは、ヤバいと思うぞ…」

      「ぎゃあああああああ!!やめてください身内の恥をここで言うのは!!」

      加藤の言葉に耳を塞ぎ叫びながら、左右に激しく首を振る美佳。

      ((そこはまあ、美佳が良いと思うものだったら、私は何でもかまわない、それより私のことだが、君がこの世界での名前を付けてくれ、いつまでもブラックカーバンクルでは言いにくいだろ))

      「たしかにそうだけど…いいの?」

      そう問う美佳に、ブラックカーバンクルは小さく頷きながら答える。

      ((かまわない、私も魔法と同じく君の思うようにカスタマイズしてくれ、なんだったらこの口調と声のトーンも変えても良いと思っている))

      「そのオジサンみたいな声と喋り方も嫌いじゃないけどね」

      そう言って笑う美佳。

      ((勿論衣装も、そんな適当なものではなく、もっと君らしい可愛らしいものを考えてみると良い、変身バンクだって作っても良い))

      「なんでそんなことまで知ってんのよ!?」

      美佳は笑いながら、叫ぶようにそう言った。

      ((勉強したのだよ))

      そう言いながら誇らしげに顔を上げるブラックカーバンクル。

      ((あと、発動体なども作っておきたいな、今の状況は普通に手でボールを投げてるようなものだからな、より魔法の威力と精度を上げるための弩的なものが欲しいところだ、それと変身用ルビーも宝石のまま持っておくよりも装飾など施してアクセサリーにした方が身に付けやすいな))

      「それなら我々アスカロン財団が何とか出来ると思います!」

      ((良いのか?))

      「構いませんよ、こちらは協力すると言ったのですから」

      ((なんだか色々とすまないな))

      「有難う御座います」

      リネアの申し出に美佳とブラックカーバンクルが揃って頭を下げる。

      「魔法で他の武器とか操る事とか出来たりするか?」

      加藤の問いに、ブラックカーバンクルは頷きながら答える。

      ((念力系の魔法もあるからそれも可能だし、前もってその物に呪文を刻んでおけば尚扱いやすくなる))

      「なるほど、それこそお前の出番だなリネア」

      「ええ、私のルーン魔法が応用出来そうですね」

      そう言って、加藤とリネアがお互い顔を見合わせながら頷く。

      「アルマにでも頼んで、それなりの武器を作らせよう、あいつこうゆうの好きだから嬉々として作るぞ、それにリネアのルーンを刻み、補助武器を作ろう」

      そう楽しそうに語る加藤。

      ((本当に助かる、そう言えばアルマ嬢も実は弟子の候補に上がっていたのだが…))

      「無理だろアイツは…」

      ブラックカーバンクルの言葉に渋い顔を見せる加藤。

      ((ああ、彼女は科学という魔法にとり憑かれているからな…))

      そう答えるブラックカーバンクルは、どこか笑っているようだった。

      「あなたが勧誘したがる相手ってことは、その人も若い女の子だったりして?」

      美佳の言葉に「正解だ、こいつロリコンだから」と答える加藤。

      ((人聞きの悪い言い方するな!))

      そう文句を言うブラックカーバンクル。

      「若い女の子なのに科学者なんて凄いな~、会ってみたい」

      そう言う美佳に、溜息をつきながら答える加藤。

      「生意気なクソガキだぞソイツ、多分ぶん殴りたくなると思う」

      そう言いながら笑顔を見せる加藤、その顔を見ながらリネアも笑う。

      「なんだよ…?」

      「いえ、加藤さん何だか楽しそうですから」

      「まあな、こうゆうのを考えるのは嫌いじゃない、男ってのはどこまで行ってもガキだからな、だが、それよりもまずこうなった経緯も込みでレイチェル嬢に報告して、お伺いを立てなきゃならんのだがな…」

      そう言いながら頭を掻く加藤に、「きっと大丈夫ですよ」と答えるリネア。

      「とりあえず上の了承を得たら、この娘のことは…これからリネア、お前が面倒みてやれ、同じ魔法使い同士、色々教えられることもあるだろ」

      「はい、それは良いのですが、どうやって自然にお近づきになればよろしいでしょうか?」

      そのリネアの問いに、加藤は次の案で答える。

      「それこそアスカロン財団のもう1つの顔を使おう、将来有望な人材として支援するという名目で親御さんを説得して、リネア、お前がその娘の家庭教師になるんだ」

      加藤の言葉に小さく溜息をつきながらも、一応納得したといった表情を見せるリネア。

      「ちょっと…強引な気がしますけど…まあやってみます、説得の方はお願いしますね」

      「頑張ってみるさ」

      そう言いながら、どこか自信なさげな表情を見せる加藤。

      「リネアさんが私の家庭教師、嬉しいです…」

      純粋に喜んでいる表情を見せる美佳に、リネアもほっこりした気持ちになった。

      「さて…これから色々とフォローしていかなきゃいけないな、とりあえず正体がバレないようにしないと、まあもしもの時は俺が上手く処理しといてやるから、安心しろ」

      「処理…?」

      加藤の言葉に首を傾げる美佳。

      「変な言い方しないでください、あなたが言うと物騒に聞えます」

      「お前も大概酷いな…」

      リネアの言葉に、やや不貞腐れた表情を見せる加藤。

      「あの加藤さん…その…本当に有難う御座います!」

      再度頭を下げる美佳に、やや照れ臭そうに頭を掻く加藤。

      「気にするな、俺達が協力するって決めたんだ、だから出来る限り助けてやるよ」

      そう言いながら、どこか優し気な目で美佳を見る加藤。

      「こう見えてこの人、子供には優しいんですよ」

      「リネア…お前は本当にいちいち…お前はもう立派な大人だからな、マジで折檻するぞこら…」

      そう言って拳を握りリネアを睨みつける加藤。
      それを見ながら、「恐い恐い」と言いながらワザとらしく大きく飛びのいて逃げるリネア。

      「…で、この娘はレベル的にどれぐらいなんだ?」

      と言う加藤の問いに、

      ((まだ君達の言うところのレベル1ぐらいかな))

      と答えるブラックカーバンクル。

      「まだそんなもんか…いきなりレベルMAXとはいかないようだな」

      少しガッカリした表情を見せる加藤。

      ((いきなり私の力をフルに使わせてしまうと美佳の体がもたないからね、だから美佳に力をつけさせ、段々と私の魔力に慣らせていく必要があるのだよ))

      そう言って、美佳を見上げるブラックカーバンクル。

      「そっか…まだ私では彩人さんや寺瀬詩郎には敵わないか…」

      そう言いながら肩を落とす美佳に、ブラックカーバンクルは首を傾げながら言った。

      ((何を言っている、あの連中ぐらいなら今の君でも十分なんとかなるぞ))

      「え、そうなの?でもレベル1なんだよね?」

      ((レベル1でも君は立派に強い、それでもまだ雛鳥段階、これからもっと強くなれるということだ、それだけ君のポンテンシャルは高い、レベルを上げていけば、いずれはその寺瀬詩郎の今の上司とだって、十分にやり合えるくらいには強くなれる))

      そのブラックカーバンクルの言葉に驚いたのは、加藤とリネアだった。

      「おいおい大きく出たな…あの牧村光平…天凰輝シグフェルにか?」

      そう言いながら、乾いた笑みを浮かべる加藤。

      「流石にちょっと、それはハードルを上げ過ぎなのでは…」

      そう言いながら半笑いするリネア。

      「強いんですかその人…?」

      と言う美佳の問いに、

      「俺の知る限りトップクラスに強い、正面から1対1でやり合える奴なんてそうそういないと思う…」

      と答える加藤。

      「そうですね、天界の大天使がそのまま降りてきて戦ってるような、そんな感じの強さです」

      と答えるリネア。
      それを聞いて、ブラックカーバンクルに振り向きながら、困ったよう表情を見せる美佳。

      「ちょっとぉ~、なんかさぁ、その人SSRの強キャラっぽいんだけど…そんな人に私が相手になるって…?」

      ((大丈夫、君なら))

      「何を根拠に!」

      ((それはね、君と契約し、君に力を与えたこの私もまた、君の言うところのSSR(スーパースペシャルレア)な強キャラだったからだよ))

      そう言いながら、背筋をピンっと張り、ドヤって見せるブラックカーバンクル。

      ((そして君はその力を受け継いだんだ、そして私が今から君をもっと強くしていく、そして将来的には君もSSRの強キャラの仲間入りだ、デッキもさぞ映えるだろうね))

      「何よそれ、私はTCGのカードかい、まあ私が言ったんだけどさ…でも、あなたってそんなに凄い人だったの?今はそんなにちっこくて、こっちの世界に逃げてきたとか言ってたくせに?」

      ((そうだな…確かに…今の私はあまりにも情けなくて頼りなく見えるかもしれないが…それでもこの私を信じて欲しい…))

      「OK、信じる、てゆーかもう信じるしかないじゃない」

      そう言いながら、ブラックカーバンクルの前に屈み、そっと手を差し出す美佳。

      「私を輝くカードにしてくれますか、お師匠さま?」

      そう言って無邪気に笑う美佳、その顔を見てブラックカーバンクルは、記憶の中にある、懐かしい顔と重ねてしまう。
      まだ自分が『百識の大賢者』と呼ばれていた、人間の魔導士だった頃の…

      “「お師匠さま!」”

      無邪気に声をかけてくる1人の少女、彼女は優秀な弟子の1人だった、そしてとても優しい娘だった、最期のその時までずっと…
      データの美佳の写真、それを見た時、あまりにも似てる、そう思った、そして運命のようなものを感じ、気が付けば動き出していた、まるで彼女に導かれるように…

      ((ルーチェ…これは君が繋げた縁なのか…?))

      ブラックカーバンクルは、美佳の目をじっと見つめながら、答えを返した。

      ((ああ、私は君をもっと輝かせてみせる、私の全てをかけて))

      ブラックカーバンクルはそっと美佳の差し出した手に前足を置いた、それをぎゅっと握り返す美佳。

      「なんだか…ペットと飼い主みたいに見えるな、この娘が最強クラスの魔法少女になるとは想像出来ないんだがな…」

      そう言いながら、どこか優し気な目で美佳を見つめる加藤。
      そんな加藤の表情を嬉しそうに見ながら、リネアは言った。

      「まあ見てみましょう、この可愛らしい正義の戦士がどれほどのものかを」

      こうして、柏葉美佳は魔法少女となった、何気に足を向けたこの小屋で、とんでもない謎生物と出会い、それを追いかけてきたアスカロン財団なる巨大組織のエージェントとも出会い、そしてその謎生物と契約して魔法少女となった、たった一時の事としては余りにも濃密な経験であり、それは彼女の運命を大きく変えるものとなった。
      そしてこの少女には、更にとんでもない運命が待ち受けているのだが…

      「まあ、これからが大変かな…でも、私が自分で選択した道だもん、やるっきゃない!私がみんなを守るんだ!」

      そう決意して、強く拳を握る美佳だった。

      • 旅鴉 より:

        まず…スイマセン…くっそ長くなりました…

        とりあえず美佳ちゃんを魔法少女にするにはどうすればいいかと考えてたら、こんなになっちゃって、まあ入り方がかなり強引になってしまいましたが…

        とりあえずブラックカーバンクルのプロフィールを、

        ブラックカーバンクル

        長い耳を持った、リスにもウサギにもキツネにも見える謎の生物、額には角のような赤い宝石が付いている、カーバンクルと呼ばれる幻獣である。
        ただし、毛は黒曜石のような艶のある黒色をしている。
        アスカロン財団がとある遺跡調査で、眠っていたこの生物を発見。
        実は異世界の生物であることが判明する、転移魔法によりゲートを開きこの世界にやってきたとのこと。
        高い知能を持ち、短時間でこの世界の言葉を覚え、尚且つ書物や、情報端末などでこの世界の歴史や文化も理解した。
        会話は念話(テレパシー)を使ってくる、喋り方はなぜか老紳士で渋い声で喋りかけてくる。
        精神攻撃無効の特性を持ち、尚且つ、額の宝石に力を集中させ光らせることで、術を跳ね返す結界を張ることが出来る。
        その瞳は魔眼で、催眠能力を持ち、目を見つめた相手の意識を奪い、操ることも出来る。
        魔法の知識は多くあれど、じつは特殊能力以外の魔法はカーバンクルの体では使うことが出来ない。
        但し、接触して意識を同調した相手の体を借りる事で、魔法を発動させることが可能、転移ゲートもそのようにして開いた。
        そして意識を同調した相手と『契約』を結ぶことで、その相手に自分の魔法の力を授けることが出来る。
        実は元は人間で、かつて魔王を倒した勇者の1人で、「百識の大賢者」と呼ばれていた大魔導士だった。

        ちなみに、このプロフィールは未完成です、管理人様の手で残りを埋めて頂ければ光栄です!
        まあSSにも書いてましたが、名前は好きに決めてください!ブラックカーバンクル以外で、喋り方と声色はオジサンでCVイメージは山〇和〇さんか、大〇芳〇さんです、でもこれも変えて貰ってもいいです。
        ブラックカーバンクルの過去に何があったか簡単に言うと、結局世界を救ったところでまた人間同士で戦争を起こし、野心家の弟子たちがそれぞれの国に散って戦争に加担して、弟子の中でもまともだったルーチェがそれに巻き込まれ、〇亡、そのルーチェと親友だった弟子(女)が闇堕ちして、魔族を従えその〇に関わった連中と他の弟子をことごとく皆〇し…ってところですね。

        とりあえず魔法少女の美佳ちゃんですが、魔法も管理人様に考えて貰えたらと思います、とりあえずあったら良いかなって思う、魔法は変身(メタモルフォーゼ)と認識阻害魔法はデフォですが、あったら嬉しいのは飛行(フライト)、物体転移(アポート)、再生(リジェネ)、念力(テレキネス)でしょうか、あと身体能力と五感は常人以上にしたいですね。

        勿論、変身しないと美佳ちゃんは普通の女の子です、普通に悪者に捕まってしまいます。
        正体は基本バレませんが、変身するところと変身を解いたところを見られたらアウトです。

        アスカロン財団との関係は、同盟関係のような感じですね、アスカロン財団の支配下に入っているわけではないです、アーロン会長は支配下に置きたいのでしょうけど、ブラックカーバンクルがそれを許さないです、無理を強いれば何をしでかすか解らないとのレイチェルからの忠告も受けてます、
        アスカロン財団からは、兵器の提供から、その他日常生活を無事に送るためのサポートを受けてます、兵器はガンダムシリーズのビットみたいな補助武器みたいなのが良いかなと思っています、水星の魔女のエアリアルみたいになったら面白いですね。

        SSの後日談
        普段見せないピッチリスーツで決めた加藤とリネアがアスカロン財団の営業として、将来有望な人材としてリサーチした美佳ちゃんを無償で支援したいと柏葉家に申し出ます、そしてリネアを美佳ちゃんの家庭教師に付けたいと申し出ますが、勿論柏葉家両親には怪訝な目で見られます、それでも熱意を持って加藤が説得し両親が納得しそうになっているところで兄の章介くん帰宅、「そんな上手い話し合ってたまるか、俺が見極めてやる」と乗り込んだところできたところで、リネアを見て(魅了にかかってなにのに)トゥンク♡、「今はグローバル社会、優秀な人に色々習って世界に羽ばたく人材になって欲しい」あっさり手の平返し、そしてめでたくリネアが美佳ちゃんの家庭教師にって展開ですかね…

        リネアちゃんが来れない時は、代わりに日置支部長の秘書が家庭教師件連絡係としてきます、一応プロフィール載せときます

        神向寺 冴佳(じんこうじ さえか)

        アスカロン財団日本支部支部長、日置善和専属の秘書
        年齢は23歳、海外留学の経験もあるバイリンガルで、有名国立大学卒の秀才。
        物腰も柔らかく、落ち着いた感じの大人の女性。
        リネアが任務で留守をする間の、美佳の家庭教師件連絡係。
        鷹松優姫刑事とは、高校時代に同級生だった時期がある。

        容姿

        茶色い髪を肩まで伸ばした、大人びた美女

        人物

        普段は見た目通り穏やかで柔らかい感じの人物、仕事も出来、日置支部長からの信頼も厚い。
        だが、心の中では結構うるさく、何かとあれば文句は言うわ、騒ぐわ、結構中身は感情的。
        好みのタイプはちょいワルな年上、時に見せる日置支部長のちょいワル部分を見ては心の中で騒いでいる。
        逆に、同年代か年下の男にはまるで興味を持たず、かなりのイケメンであってもまるで触手は動かない。
        そして今の推しは加藤段十郎で、加藤が訪れる際、表面は平静を保ち冷静に対応しているが、心の中ではキャーキャー言っている。
        加藤に美佳の事を頼まれたときも、静かに「仕事に支障をきたさない程度には」と答えていたが、内心は小躍りして喜んでいた。
        最初は美佳のことは加藤に頼まれたからと相手にしていたのだが、美佳の性格を気に入り、直ぐに打ち解けた。
        まだ23歳と若いが、大人の女を意識しており、たまに大人マウントをとってくるので、リネアとか若い子をムっとさせることがある。
        酒が好きで、バーや居酒屋巡りがもはや趣味と言っても良い、勿論家飲みもする。
        かなりの酒豪で滅多に酔うことはないが、酔うと厄介な裏の顔が出てきてしまい、本気で加藤を口説きかけたことがある。

        AI生成で絵も描いたので、後日載せます

        リネアとは頻繁に会うことはありますが、加藤もたまに様子を見に来てくれます、頻繁に会うと事案になるのでたまにです、会った時にはアイスとか奢ってくれます。

        アルマとは、最初に会った時はアルマはやっぱり不遜な態度をとってきますが、尊敬な眼差しでグイグイくる美佳ちゃんに圧される形で、結局仲良しになります、「美佳を不幸にしたら解剖するからな」っとブラックカーバンクルを脅すぐらいに。

        兄の章介くんにはいずれ正体がバレるって展開とかもありかなって思ってはいるのですが、その時お情けで魔法の能力は与えられませんが、サーバント契約といった形で身体能力と五感向上、再生能力などを与えられ、一応スーパーヒーローの仲間入りってのもありかなって思ってます。

        ちなみに、美佳ちゃんの正体はアスカロン財団の者であってもごく一部の者しか知らず、してる者はリネアの魔法で制約をかけられ、正体を言おうとしたら途端に名前が出て来なくなる状態になってます、それは会長のアーロンも例外ではないです。

        後々、『魔法少女にあこがれて』のマジアベーゼや『アクロトリップ』の伊達地図子のような(両方例えが解らなかったらスイマセン)、ファンが拗らせすぎて敵になったみたいなキャラも作りたいなって思っています。

        これは今回やってるBRAVERS EDITIONの話の時系列的に前の話にしたいなと思っています、最後の方にでも少し関われたらなってちょっと思ってたりしてます…

        なんか長々と長文スイマセン…

        • 渾身の超大作、ありがとうございます<(_ _)>
          しかし美佳ちゃんがここまで精神的に追い詰められていたとは…。しかも寺瀬詩郎のことを徹底して嫌っているようですねぇ。これは詩郎くん、迂闊に鷺島市には戻れなさそう…。
          中学生以下は子ども扱いなのか、意外に美佳ちゃんには甘い感じの段十郎。彼の普段は見せない意外な素顔ですね。

          > 「ええ、私は魔女ですが、この国の漫画やアニメで出てくるような魔法少女って可愛くて素敵で、私憧れてたんですよ、ただアルマにそれ言ったら『18歳は既に適齢期過ぎてるって』酷い事言われましたけど…」

          この時にやや不満そうにふくれっ面になるリネアちゃんが可愛いですね。でもリネアちゃん、最近は『魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜』での20歳の女子大生プリキュアの例もあるので、18歳ならまだまだ余裕でセーフなんですよ(^^♪

          > ちなみに、このプロフィールは未完成です、管理人様の手で残りを埋めて頂ければ光栄です!
          > まあSSにも書いてましたが、名前は好きに決めてください!ブラックカーバンクル以外で、喋り方と声色はオジサンでCVイメージは山〇和〇さんか、大〇芳〇さんです、でもこれも変えて貰ってもいいです。

          了解しました。ブラックカーバンクルについても、本来の人格は中年イケオジですが、プリキュアの一部妖精みたいに人間(見た目は美佳ちゃんと同年代の男子)の姿にも化けれるようにしたいと思います。

          > これは今回やってるBRAVERS EDITIONの話の時系列的に前の話にしたいなと思っています、最後の方にでも少し関われたらなってちょっと思ってたりしてます…

          現在進行している温泉旅行編に、(終盤にちょこっととはいえ)まさかの魔法少女美佳ちゃん登場予定!?
          これは楽しみですね。それまでに魔法少女美佳ちゃんの設定を固めておかないとですね。
          新キャラの「神向寺 冴佳(じんこうじ さえか)」のAIイラストもお待ちしてます。

  3. JUDO より:

    百合鴉に連行されてるリネアちゃんという構図がたまらない・・・(*´Д`)
    こちらでは、まだ少年しか連行してない百合鴉姐さん・・・次は・・・(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

    • 百合鴉殿ではありませんが、ヨド〇ナ様が縛られている瀬〇お嬢様を連行しているイラストは、以前にあったような…(本編でも見たかった)。

  4. bakubond より:

    ライトシーカーに救出された学生報道部、このまま逃げ切れるわけはやっぱりありませんでしたね。DIDの神様はしっかり見ておられたということですか…。

     旅鴉様超大作お疲れさまでした。美佳ちゃんが魔法少女になり、お兄様の章介君が正体バレのおこぼれでスーパーヒーローの端くれに…、となると作中で美佳ちゃんが感じていた孤独感を今度は音祢ちゃんが…、ということになりそうですね。そして音祢ちゃんもまたスーパーヒロインの道へ…、ということになるんでしょうか。まあ、身体能力はそれなりにありそうですから…。

    • > ライトシーカーに救出された学生報道部、このまま逃げ切れるわけはやっぱりありませんでしたね。DIDの神様はしっかり見ておられたということですか…。

      学生報道部が何者かに再捕獲されてしまったことは、まだ正義側は誰も知らない状況。果たしてこれが後々どのような展開へと繋がるのでしょうか…。

      > お兄様の章介君が正体バレのおこぼれでスーパーヒーローの端くれに…、

      よかったね章介くん(^_^;)
      でもミラージュ上司こと城島美蘭は、それを見て果たしてどう思うことやら?((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

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