BRAVERS EDITION　episode.113

今は海底に眠る巨大移動要塞ブレイバーベースの定期メンテナンスから戻った牧村光平たちをセントリネル・ハブで待ち受けていたのは、与党幹事長の堰合金之助せきあい きんのすけ（実はネオブラックマフィアの怪人クローカメレオン2世が化けた偽者）だった。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

応接間にて

「え～っと……縄抜け訓練とは、どういう意味でしょうか？」
光平は困惑を隠せず、眉をひそめながら問いかけた。

堰合はまるで講演でもするかのように堂々と答える。
「うむ、実はだね、君たちブレイバーズ隊員は、常に日々危険な任務に従事しとる。その中でも敵に捕らえられて人質・捕虜となる危難もこれまで多かったと聞く。だがいつも都合よく味方に救出され、生還できる幸運が続くとも限らん」

語る声には威厳めいた調子があった。
「儂は未来ある若い命を無駄に散らしたくはない。そこで――万一敵に捕らえられて身体の自由を拘束された事態を想定して、自力で脱出できるようにするための特殊訓練を提案しておるのだよ」

「はぁ……」
光平は曖昧に相槌を打ったが、心の奥底では違和感が募っていく。昨日まであれほど高圧的だった男が、ここまで丁寧に「若者の未来」を語るものだろうか。

そんな光平の胸中を見透かすかのように、堰合は目を細めて微笑んだ。
「君に紹介したい人間がおる」
そう言って扉の方へと視線を送る。
「入って来たまえ！」

応接間の扉が開き、すらりとした黒髪の女性が姿を現した。黒いビジネススーツに身を包み、眼鏡をかけた知的な雰囲気。秘書然とした振る舞いで歩み寄り、光平たちの前で恭しく一礼した。

「はじめまして、牧村長官。ネオ・ヴァンタジス・コーポレーションの会長秘書をしております、ヴァネッサ=レイヴンズクロフトと申します」

彼女は滑らかな動作で名刺を差し出した。そのカードには確かに、海外に拠点を置く世界最大規模のエネルギー企業――Neo Vantagis Corporationの名が刻まれている。

「弊社では警備部門が企画しました、軍、警察、その他 特務機関関係者を対象とした脱出訓練プランをご用意しております。今回は堰合先生のご紹介で、是非ともブレイバーズの隊員の皆さんにもモニターとしてご協力いただければと思っておりまして」

丁寧な口調。だがその瞳の奥に、冷ややかで読み取れぬ光が宿っていた。

光平は一瞥だけ名刺を確認すると、低い声で応じた。
「ヴァネッサさん、といいましたね。申し訳ありませんが――特定の企業に対するご協力はできません」

断りの言葉に、ヴァネッサは小さく笑みを浮かべた。
「フフッ、ご心配なさらずとも大丈夫です。別にブレイバーズとの間に受注契約を取りたい訳ではありません。あくまで、弊社から頭を下げる形で、ご協力をお願いしているのです」

一歩も引かぬその態度に、光平の表情は硬直したままだった。
「………」

応接間の空気は張り詰め、副長官の仲里深雪、沢渡優香、錦織佳代、そして後から応接間に入って来た稲垣千秋までが思わず息を呑む。
果たして、この「堰合」とヴァネッサの狙いは何なのか――。

偽堰合の企み

「堰合先生、この訓練の場には先生も立ち会われるのですか？」
光平の問いに、堰合は胸を張って答えた。
「勿論だ」

そこで光平は、ふと視線を鋭く細めた。
「この上は失礼を顧みず、率直にお尋ねします」

「……？」
堰合が小首を傾げる。

「先生は――SMのご趣味があるそうですね？」

「……ッ！？」
突如として突きつけられた言葉に、堰合の顔がみるみる赤く染まった。
「な、な、なにを言い出すんだ君は！？　し、失敬だぞ！！💦」

狼狽し、額に玉の汗を浮かべる堰合。
（な、なんだと！？　あのジジイにそんな変態趣味があったのか！？　聞いてないぞ……！）
クローカメレオン2世は内心で大いに慌てた。ブレイバーズの情報網は想像以上に鋭い。下手を打てば化けの皮が剥がれかねない。

光平は淡々と続ける。
「勿論、個人の趣味にどうこう口を差し挟むつもりはありません。ですが――もし先生ご自身の性的欲求を満たすために、うちの女性隊員たちを利用しようとしているのなら……組織を預かる長官として、絶対に容認できません」

冷ややかな眼差しが、堰合に突き刺さる。
「ぶ、ぶ……無礼だぞ！　君！💢（チッ、勘の鋭い奴め…!!💦）」
声を裏返らせるその姿は、先ほどまでの威厳など見る影もない。

光平は冷たく言い放った。
「……お帰りください」

応接間の空気が凍りつく。優香も佳代も、千秋も深雪でさえも、ただ静かに事態の推移を見守るしかなかった。

ブレイバーズの予算権を握る堰合幹事長を誘拐して偽者とすり替えれば、牧村光平も容易にその圧力に屈するだろうと見込んだ作戦だったが、そうは問屋が卸さなかったようだ。だがここで光平を怒らせては計画が潰えてしまう。そう判断したヴァネッサが、さっと一歩前に出ると、偽堰合の前に立ちふさがるように両手を掲げて制止した。

「ホホホッ……牧村長官のご懸念ももっともですわ」
優雅に笑みを浮かべ、場を和ませるように声を響かせる。
「訓練の場には、女性である私も必ず立ち会わせていただきます。それに、この訓練は決して女性だけを対象としたものではありません。男性隊員も含め、幅広く実施させていただくつもりです」

落ち着いたその声は、場の緊張をわずかに和らげた。
「決して、長官がご心配されるようなことにはならない――それは私が保証いたします」

光平はなおも疑念を隠さず、低く呟いた。
「しかし……」

彼の瞳に宿る警戒の炎は消えていない。
一方で、ヴァネッサの微笑みは凍てつくほど冷ややかで、その裏に潜む真意を知る者は誰一人いなかった。

思わぬ来訪者

冷たい火花を散らすような空気が、応接間に張り詰めていた。
光平はなおも疑念の視線を堰合に向け、ヴァネッサは笑みを崩さず応酬している。
そんな中――。

「ごきげんよう、皆さん♪」

場の空気を無邪気に破るような、鈴の音のように明るい声が響いた。
全員が驚いて振り返ると、扉の向こうからブロンドのロングヘアを揺らし、瞳をきらめかせる少女が現れる。
安城グループの社長令嬢、安城アリアドネ明日香。その後ろには、長身で黒髪の麗人――専属ボディーガードの八雲睦美が静かに従っていた。

「明日香さん！？　どうしてここに？」
駆け寄った千秋が声を裏返す。

明日香はぷくっと頬を膨らませた。
「もう、ひどいです千秋さん。今日はセントリネル・ハブの中を見学させてもらえるっていう約束でしたのに……」

「あっ……💦」
千秋は額を押さえた。連日の騒動に翻弄され、その約束をすっかり忘れていたのだ。

「お話は扉の外でも聞かせていただいておりましたわ。――堰合先生も、お久しぶりです」
明日香は屈託なく微笑み、堰合に視線を向ける。

「……（ん？　誰だこの娘は？）」
クローカメレオン2世は一瞬動揺した。だがすぐに、事前に脳裏に刷り込んでおいた本物の堰合の交流関係に関するデータを呼び出し、冷静に取り繕う。
「ああ……確か安城グループのお嬢さんだったね。うむ、久しぶりだ。元気そうで何より」

「はい♪」明日香はにっこりと頷いた。
「その縄抜け訓練。まるで誘拐脱出ごっこみたいで楽しそうですね。是非、私たちも参加させてくださいな♪」

「えええっ！？」
千秋が絶句する。

睦美は困ったような表情を浮かべて肩をすくめた。
「ごめんなさい、千秋さん。……明日香さんは一度言い出したら聞かなくて」

「ま、待ってください」光平が慌てて両手を上げる。
「まだモニターに協力するとは、何も決めていませんから💦」

ところが、その制止に割って入る声があった。
「いいんじゃない？　特に怪しい点はなさそうだし。それに、縄抜けならくノ一のアタシも得意だしさ♪」
佳代が軽い調子で笑みを浮かべる。

「佳代ちゃん……」光平は眉をひそめる。

「佳代さんが参加するなら、私も参加します！」
千秋がきっぱり言い切った。
「明日香さんを放っておくわけにもいきませんから」

「みんなが参加するなら……私も」
優香も静かに賛同の意を示す。

「……どうやら話はまとまったようだね」
堰合は口元を吊り上げ、にやりと笑った。

「…………」
光平は歯を食いしばり、天井を仰ぐ。
気づけばすっかり流れを持っていかれ、結局のところ、縄抜け脱出訓練は決行されることとなってしまったのだった。

（つづく）

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