新ハンター、紅虎現る！　第1話

日曜日のテニスコート

　日曜日の午後、青い空の下で、紫城心翔と瀬尾梨帆はテニスコートでシングルスの対決を繰り広げていた。コートの端には、美濃本敦が審判として立ち、真剣な顔つきでプレイを見守っている。

　心翔は軽やかなステップでコートを駆け、力強くボールを打ち返す。一方の梨帆も、しなやかな動きでボールに迫る。コートの端からは、彼らと彼女たちの笑い声が時折聞こえてくる。普段の部活動の練習とは違い、彼らはただただテニスを楽しんでプレイしているようだ。

「おー、すごい返球だな、心翔！」敦が声をかける。

心翔は笑顔で頭を下げ、「まだまだ本気を出しちゃいないぜ♪　しっかり見てろよ、敦！」

対する梨帆も微笑みながら言う。「こっちだってまだまだこれからだよ、心翔！」

　彼らのプレイはまさに親しみやすいもので、時には失敗したショットでも笑い合い、時には見事なプレイに拍手し合う。その間、敦は公平なジャッジを心がけ、時折冗談を交えてプレイを盛り上げる。

　終わりのボールがコートを飛び越え、梨帆が勝利を手にする。

「やったー！私の勝ちだよ、心翔！」

　梨帆は手を振りながら笑顔で言った。心翔も「チェッ、この次はぜってー負けないからな！」と負け惜しみっぽいことを言いつつも、その顔は勝負に負けたとはいえ心晴れやかなものだった。

「いい汗かいたから、そろそろシャワーでも浴びようぜ！」と敦が提案し、満面の笑顔でそれぞれの更衣室へと3人。しかしその様子を少し離れた場所から密かに伺っている者がいた。妖魔結社ザイザムの戦略諜報参謀ビオベミラだ。ルディウス大元帥に指揮権を奪われて失脚した彼女は、虎視眈々と逆襲の機会を窺っていた。

「恨み重なるシブルリックオーダーめ！ 次こそがお前たちの年貢の納め時だ！ 紅虎とやら、あとは任せたぞ！」
「うふふ♪ 任せて！ 引き受けた仕事はきっちり完遂させてもらうわ💓」

　美しい顔に、190㎝を越える身長の、長い髪を紅く染めた、まるでモデルのような…男…
細身ながら引き締まった体をしていて、所謂細マッチョで、それを際立たせるようなピッチリとした服を着ている。
　彼の名は「紅虎」。犯罪組織ベラドンナの狩人（ハンター）である。どうやら今回、ビオベミラは一発形勢逆転を狙って独自にベラドンナと手を組んだようだ。

「本当に妖魔人工作員の助力は要らぬのか？」
「要らないわ。そんな連中がいたら、かえって足手まといよ。手出しは一切無用。全てアタシに任せてもらうわよ。フフフッ…」(￣ー￣)ﾆﾔﾘ

　やがてテニスコートの女子更衣室から梨帆の「キャアアッ！！」という悲鳴が聞こえ、慌てて心翔と敦が駆けつけた時には現場に梨帆の被っていたキャップのみが残されており、彼女の姿は更衣室の中からは煙のように消えていたのは、それからしばらくしてのことであった。

監禁基地へようこそ！

「んん～っ！！ んんむむぅ～っ！！」

紅虎に攫われて来た梨帆は、ビオベミラのアジトに縛られて猿轡も噛まされて捕らえられていた。

「オホホホホッ！！ どうだ瀬尾梨帆？ ここはお前たちシブルリックオーダーを捕らえて監禁しておくために、わざわざ建設した秘密の捕虜収容所基地だ。そう簡単に逃げられるとは思うでないぞ！」
「捕まえた人質の最終的な処断方法はそちらにお任せするけど、まさかすぐに〇すだなんて勿体ないことは言わないわよね？」
「無論だ！心配するな。今すぐ〇しては面白くない！ まずはその前にたっぷりと楽しんでから始末してやろう。そうでなければ私の積もりに積もった怨念は晴れぬ！」
「そういう貴女のサディスティックなところ、嫌いじゃないわ♪」
「お前は残りの奴らも捕らえて来い！」
「任せて♪ すぐに捕まえて来るわ。それまでその娘と遊んで暇でも潰して待っててちょーだい」

そう言って自信満々に出かけて行く紅虎。そして部屋にはビオベミラと梨帆だけが残された。

「さぁて、紅虎はああ言っていたが、どうやって遊んでくれようか？」

右手の鋭い爪を伸ばして、残忍な笑みを浮かべながら梨帆に迫ろうとするビオベミラ。

「んんんーっ！！んむぐぐぅぅー！！（イヤッ、心翔！ 敦！ みんな、助けて!!）」

果たして梨帆の運命は！？

つづく。