異世界タシェニュヴルアのネヒロンニア海のど真ん中に浮かぶ絶海の孤島アルスネス島を拠点とし、武装商船団による海上交易と狩猟を生業とするシルカイ族の族長の息子(後継者で次期族長)レイヴン。彼は海賊に囚われていた女神官のエリュナ=ヴェルティアを助ける。
一方その頃、地球のパシフィックゲートウェイ島では、中村弘樹と滝沢美香が、突如街中に発生したワームホールに呑み込まれてしまった。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
弘樹、異世界へ
――波の音がする。
柔らかい砂の感触と、潮の匂いが鼻をくすぐった。

「…うっ……ううっ……こ、ここは……?」
ゆっくりと目を開けた中村弘樹は、青い空を見上げていた。眩しい日差しが視界を刺す。上半身を起こすと、そこは見覚えのない海辺――白い砂浜と濃い青の海が広がる、美しいがまったく知らない場所だった。
さっきまでブライトバレー市にいたはずなのに。
美香と話して、突然あの渦に吸い込まれて――。
弘樹は一気に血の気が引いた。
「あっ……美香さん! 美香さぁぁ〜ん!! どこにいるんだぁ〜!?!」
砂浜に響き渡るほどの声で叫ぶ。だが返事はない。
少し先には林があり、反対側には岩場と海。どこにも彼女の姿はなかった。
胸が締め付けられるように不安が広がる。
「…………っ」
そのとき、木の影から何人かの人影が現れた。
島の住民らしき男女が、驚いた様子でこちらを指さしながら近づいてくる。
その姿は、弘樹の知るどの民族とも違っていた。
麻のような粗い布で作られた衣服に、飾りのついた金属製の腕輪。
そして彼らが話す言語――どの国のものとも違う異様な響きだった。
「…………? ……〇※◆……?」
「なっ……」
何を言っているのかまったく分からない。
完全に外国人、いや、もっと違う何か――そんな印象さえあった。
住民たちは警戒するように弘樹の周りを囲む。
「……い、いったいお前たちは何なんだよ!? 近づくなっ!」
震える声で叫んでも、彼らは止まらない。互いに言葉を交わしながら距離を詰めてくる。
そのとき――
「◯◇※ーッ! ◇◆※=!」
野太い声と共に、別の男たちが駆けてくる。
海賊……ではない。だが、役人というには粗野で、海の男のような服装をしていた。
彼らは住民から何かを聞き取ると、すぐさま弘樹へと向き直った。
「え……ちょ、ちょっと待って、何するんだよ!」
男たちは弘樹を押さえつけ、縄を取り出すと手際よく縛り上げる。
「や、やめろ! 離せっ! やめろぉぉ!!」
必死に暴れるが、筋肉質の男たちの力は強い。
腕を後ろにねじり上げられ、手首に縄を打ち込まれ、ぎゅっと締められた。
「痛っ……あ……!」
抵抗虚しく、弘樹は完全に拘束されてしまう。

「◇※……◆※……」
男たちは互いに言葉を交わし、弘樹を引き立てて歩き出した。
砂を蹴りながら、少年は荒々しく引っ張られていく。
向かう先は、浜辺の奥にある木造の建物群――
この島の屯所、役所のような場所らしい。
しかし弘樹には、それすら分からなかった。
ただただ、不安と恐怖が胸を占めていた。
美香は無事なのか?
ここはどこなのか?
彼らは自分をどうするつもりなのか?
答えはひとつも分からないまま――
弘樹は異世界の島の役人たちによって、どこへともなく連行されていくのだった。
勇者の帰還
海賊討伐を終え、エリュナを伴ってアルスネス島に帰還したレイヴンたちを、島民たちの歓声が迎えていた。島の埠頭は、船団の凱旋を喜ぶ声と、安堵の笑みで満ちている。
「若、無事なお帰り、何よりです」
留守を預かっていた年長の部下が、胸に手を当てて深々と頭を下げた。
「ああ。海賊たちに捕まっていた神官の女の人を助け出してきた。疲れてるみたいだ。島にいる間は丁重にもてなしてやってくれ」
「承知しました」
レイヴンは頷いたあと、ふと表情を引き締めた。
「ところで……俺の留守中、何か変わったことはなかったか?」
尋ねると、部下は少し言いにくそうにしてから答えた。
「はぁ、実は――妙な男を捕まえました」
「妙な男?」
「歳と背格好は若と同じくらい。見たこともない服を着ていて、聞いたこともない言葉を話すんですよ。どうにも正体がつかめないので、念のため牢に入れてあります」
シルカイ族は海を巡る交易民。多言語に通じる者が多い。そんな彼らが誰一人として理解できない言語を話す男――相当な異例だ。
「……すぐそいつに会おう。案内してくれ」
「こちらです」
レイヴンは部下の案内で屯所の奥、木造の牢屋へと足を踏み入れた。潮風で少し湿った板張りの空気がひんやりと肌に触れた。
重い木製の格子戸がギィ、と軋む。

中にいたのは――昨日まで平凡な日常を送っていたはずの少年、中村弘樹だった。
縄で胴を巻かれ、両手首には金属の手錠。足元には鎖。白い短パンに紺色のパーカー姿のまま、まるで自分の状況が理解できていないような顔で座り込んでいた。
レイヴンは無言のまま、牢に歩み寄った。
そのまま――じっと弘樹の顔を見つめる。
(……なんだ、この人……)
弘樹は心臓がやたらと早く打ち始めるのを感じた。相手の言葉は理解できない。しかし視線だけは、妙にはっきりと伝わってきた。
警戒、疑念、そして――興味。
レイヴンの鋭い瞳が、まるで弘樹を一つの“謎”として見据えているようだった。
「……(見たことねぇ服だ……どこの海域の人間だ? それとも、もしや…?)」
レイヴンは小さく息を吐き、格子越しにひざを折って弘樹の視線の高さに合わせた。
弘樹はびくりと肩をすくめる。
互いに言葉は通じないまま、ただ視線だけが交錯する。
その一瞬の静寂が、これから始まる大きな物語の幕開けであることを、まだ誰も知らなかった。
(つづく)

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