安土市内で失踪した大学生の捜索・救出作戦を命じられた獅場俊一と寺瀬詩郎の二人は、地球連邦軍オメガ・ヴェール基地にあるディオドスシステムを使って、セレスティア=スパークル少尉(セリィ)と共に異世界タシェニュヴルアへと渡り、そこでグランベルミア王国の女騎士リュシエル・アストレア=ヴァン=グレイヴの協力を得て、セリィを攫った山賊グロム一家を壊滅へと追い込んだ。
そんな俊一たちの元へ地球から新たに合流して来た笹南侑衣梨を加え、第2次囮作戦が開始される。魔物に襲われた際に、発信器を持たせた侑衣梨がわざと敵に攫われるが…。
史奈発見
城の石壁に囲まれた冷たい牢獄。湿気と鉄錆の匂いが漂い、滴る水の音だけが虚しく響いていた。鎖で縛られている笹南侑衣梨は、兵士に突き飛ばされるように中へ放り込まれ、すぐに粗末な椅子に固定された。
「ふん、運のいい奴だ。そこでしばらく大人しくしていろ!」
重たい鉄格子が軋む音を立てて閉じられ、静寂が戻る。荒く息を整えていた侑衣梨の耳に、不意に微かな泣き声が届いた。
しくしく――と、誰かが隣の牢で嗚咽を漏らしているのだ。
「…誰? もしかして、そこに誰かいるの?」
呼びかけると、すすり泣きは一瞬止まり、驚きに満ちた女性の声が返ってきた。
「…あ、あなたは!?」
侑衣梨の目が見開かれる。声の調子で、すぐに思い当たった。
「貴女、もしかして…桐尾史奈さん?」
「ど、どうして私の名前を!?」
侑衣梨の心に安堵が広がる。捜していた少女が、こうして生きている。
「よかった。無事だったんですね。私は日本の警察です。貴女を助けに来ました!」

中央の牢獄区内廊下は、Stable Diffusion Onlineで生成しました。
互いに鎖で縛られ、椅子に固定された身。鉄格子の隙間から向こうに身を乗り出すこともできず、直接顔を合わせることはできない。しかし声が届くだけで十分だった。お互いの存在が確かめられたのだ。
「け、警察が…どうしてこんなところにまで!?」
「詳しい話は後! それよりも教えて。草川律希君は一緒じゃないの?」
短い沈黙のあと、史奈の震えた声が返る。
「…分かりません。この城に攫われて来てから、一度だけ彼に会いました。でも、それっきりで…。今、彼がどこにいるのかも知らないんです」
侑衣梨は唇を噛み、力強い声を投げかけた。
「今、ブレイバーズが私たちを救出するためにここに向かっています。もうしばらくの辛抱よ!気を強く持って!」
史奈の声が、涙を拭ったように明るさを帯びる。
「…はい!」
暗い牢獄の中、希望の灯火が確かに灯った瞬間だった。
――外では嵐のような戦いが迫っている。だが、二人の少女の心には未来へ繋がる光が宿っていた。
突入、暗黒魔城!
闇の王国ヴェロルホアセアの暗黒魔城。重々しい結界に覆われ、外界から完全に隔絶されたその内部に、不意の轟音が響き渡った。
――ガガガガァァァンッ!!
厚い闇の結界を、灼けつくような閃光が切り裂く。
漆黒の石壁を貫き、炎を吐く彗星のように突入してきたのは、鋼の巨獣の咆哮を宿すスーパーバイク《アルドコブランダー》。
そのハンドルを握るのは、獣牙を備えた紫の戦士――サーベルタイガーレギウス。二人乗りで後ろにまたがるのは、黄金の鬣をなびかせる獅子の戦士――ライオンレギウス。
「行くぞ俊一! 目標は一直線だ!」
「おうよ! 侑衣梨さんたちを取り返すまで止まらねぇぜ!!」
バイクのエンジン音が雷鳴のように轟き、石畳を裂く勢いで走り抜ける。
結界を破られた衝撃に、魔城全体が大混乱に陥った。
「な、何だこの光は!?」
「侵入者だ!迎え撃て!!」
漆黒の甲冑に身を包んだ黒騎士たちが、剣と槍を構えて通路を埋め尽くす。だが次の瞬間、アルドコブランダーが急停止し、二人の戦士が勢いよく跳び降りた。
「邪魔だァッ!!」
サーベルタイガーレギウスの鋭い剣閃が夜闇を切り裂き、迫り来る黒騎士の武器ごと胴を薙ぎ払う。
「オラァッ!!」
獣王の咆哮とともに振り下ろされたライオンレギウスの剛腕の斬撃が、数体の黒騎士を一撃で吹き飛ばした。
炎と金属の火花が交錯し、城内は修羅場と化す。黒騎士たちの怒号、剣戟の轟き、石壁を砕く衝撃音が重なり合い、魔城全体を揺るがしていた。
――だがその様子を、玉座から静かに見つめる影があった。
謁見の間、黒水晶の玉座に腰掛ける悪の女王モルガナ=ナグサリア。
彼女の前には、魔力を宿した水晶玉が浮かび、侵入者たちの猛攻を克明に映し出している。
「フフフッ……来おったか」
冷たい声が闇に溶ける。
彼女の右手には、先程砕け散った腕輪の中から拾い上げた奇妙な装置――発信器が握られていた。
本来ならば即座に破壊するべき異物。だが彼女はそうしなかった。
あえて利用し、敵を自らの居城へと招き寄せたのだ。
(この者らを討つことで、妾の力をチキュウとかいう異世界に知らしめるのもよい。あるいは……ティル・アナスの環についてこやつらも何か知っているもしれぬな)
水晶玉に映る二人の戦士の姿を見つめながら、モルガナは薄く笑みを浮かべるのだった。
――果たして、彼女の真なる狙いとは何か。
ブレイバーズと闇の女王の対決の火蓋は、いま切って落とされた。
(つづく)
コメント
発信機が発見されるも、何とか命は助けてもらった侑衣梨ちゃんだが、牢屋に入れられ椅子に拘束される、だが隣の牢からすすり泣く女の子の声が…ここで久々の史奈さん。
自らの身分を明かし史奈さんを安心させる侑衣梨ちゃん、まさかこんな異世界で警察が来てくれるとは、それだけで安心出来るでしょうね…って捕まってますが…
でも律希くんの姿はないようで…心配ではありますね、BBAにエキス吸われてないだろうか…?
そして詩郎くんと俊一くんはレギウスに変身して、アルドコブランダーで結界をぶち破りどこかの世紀末モヒカンのごとくヒャッハーと登場!
何だか侑衣梨さん助けるまで止まらねーぜとかテンション高め、主人公サイドがこんな時ってろくなことにならないんだよな…
>「フフフッ……来おったか」
>冷たい声が闇に溶ける。
彼女の右手には、先程砕け散った腕輪の中から拾い上げた奇妙な装置――発信器が握られていた。
>本来ならば即座に破壊するべき異物。だが彼女はそうしなかった。
あえて利用し、敵を自らの居城へと招き寄せたのだ。
>(この者らを討つことで、妾の力をチキュウとかいう異世界に知らしめるのもよい。あるいは……ティル・アナスの環についてこやつらも何か知っているもしれぬな)
ほらね…なんだか既に襲撃察知して待ち構えてらっしゃる…絶対罠はってるやんこれ…
さて、なんだか余裕な感じで待ち構える女王モルガナを撃破して、侑衣梨ちゃんに、史奈さん、律希くんを無事助け出すことが出来るのであろうか、なんだか普通に終わりそうにないですね…
前回のコメ
>しかも絵里花ちゃんには以前にはなかった「褐色肌娘」という属性まで付与されて!
確かに設定にはなかったですが、絵師さんの最初の絵がたしか褐色系でそれ以降の絵も褐色な感じだったと記憶してますので、褐色設定にしました。
>「恋中 七香 koinaka nanaka」のところにちょいとお邪魔させてもらうか、それともグラビティ・ブレイカーズのいる「登場キャラクター紹介.10」のところに追加して載せるか、それとも「登場キャラクター紹介.12」を新たに作ってきちんとした独立記事にしましょうか?
七香ちゃんの友人達という形で七香ちゃんのところでお邪魔でも良いかなとは思っていたのですが、独立記事も捨てがたいところではあります、そこは管理人様にお任せします。
> 七香ちゃんの友人達という形で七香ちゃんのところでお邪魔でも良いかなとは思っていたのですが、独立記事も捨てがたいところではあります、そこは管理人様にお任せします。
「登場キャラクター紹介.12」として、すでに下書きが完成しております。BRAVERS EDITION異世界編もそろそろ佳境に差し掛かる頃合い。今やってる異世界編が終わったら「登場キャラクター紹介.12」をupします。絵里花ちゃん&佳菜ちゃんの百春高校制服姿のイラストも載せておきましたので乞うご期待ください。
女子警官と美少女の連縛(ではないかもしれませんが・・・)シチュも久しぶりな気が。
チキュウとカタカナ表記だと、ついつい五王国によって統治されるチキューの方が脳裏に・・・
いずれそちらの方が出てくるかもですが(;^_^A
> 女子警官と美少女の連縛(ではないかもしれませんが・・・)シチュも久しぶりな気が。
まあ女子警官と言っても今回は制服着てませんが(;^_^A アセアセ・・・
> チキュウとカタカナ表記だと、ついつい五王国によって統治されるチキューの方が脳裏に・・・
> いずれそちらの方が出てくるかもですが(;^_^A
リッたん――もとい、リタ陛下ならゼウスに代わる新正義組織の指令部メンバーに相応しい感じですね。