誘拐された沢渡優香と柏村晴真を救出に向かったシグフェル。場所を突き止め、犯人のクロウレギウスを追い詰める。クロウレギウスを難なく倒したシグフェルは黒幕の名を吐かせようと問い詰めるが、足一歩でクロウレギウスは何者かに口封じされてしまった!
「フハハハハ、さすがだねぇ、天凰輝シグフェル…いや、牧村光平君!」
突然辺りに謎の声が木霊する。
「誰だ!?」
「僕の名はピラニアレギウス!」
「ピラニアレギウス…? お前が黒幕か!?」
「今回は僕の配下のクロウレギウスが大変世話になった。だから君のその強さに免じて、今日は大人しく優香ちゃんと晴真くんは無傷で返してあげよう。でも次はこうはいかないよ。(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
未だ姿すら満足に現さぬ更なる謎の敵の出現に、戦いの意思を新たにする光平であった。
それから数日後、錦織佳代は主人である松平宗瑞のお遣いで、京都の名家・綾小路邸を訪れていた。一か月ほど前、綾小路邸の蔵で発見された茶碗が、太閤秀吉が愛用したと伝わる伝説の茶器「鹿鳴茶碗(ししなりちゃわん)」の可能性があるというのである。戦時中の空襲で焼失したかと思われていた鹿鳴茶碗。もし本物だとすればン千万円は下らないとされ、鑑定結果が出た翌日の朝刊の一面をこのニュースが飾るのは間違いない。その鑑定をしかるべき目利きに依頼する仲介を綾小路家の当主から依頼された宗瑞が、こうして佳代を遣いとして寄越したという訳である。綾小路家の当主から慎重に風呂敷包みの桐箱を預かり、邸宅の裏門から外へと出た佳代だったが、そこで突然彼女は目出し帽で顔を隠した妙な二人組に行く手を阻まれた。
「何だいアンタたち?」
「お嬢ちゃん、悪いことは言わないからその風呂敷包みをこっちに寄越しな!」
目出し帽の不審者二人組は、一人はやや肥満気味の中年男、そしてもう一人の痩せてる方は一言も喋らず顔を隠してこそいるものの女だとすぐに見破る佳代。目的はこの風呂敷包みの中身の茶碗か…。
「この風呂敷包みの中身のことをどこで知ったの?」
「問答は無用だ。さっさと寄越せやゴルァ!!」
痺れを切らした二人組は光り物の凶器をチラつかせて佳代に躍りかかるが、その凶器も100円ショップで売られている玩具の偽物だとあっさり見破っていた佳代にまるで子供同然にあしらわれる始末。
「ゼェ…ゼェ…なかなかやるなぁ嬢ちゃん」
「息切れするくらいならそろそろやめたら?」
「う、うるせぇ! とうとう俺らを怒らせたな! 思い知らせてやるぜ!!」
目出し帽の二人組は、豚の姿のピッグレギウスと、ガチョウの姿のグースレギウスに変身した。
「どうだ!驚いたか小娘!」
「大人しくその風呂敷包みの箱をこっちに寄越した方が身のためよ!」
「ふ~ん…」
「ふ、ふ~ん…って?? 俺たちが怖くねぇのか?」
「全然」
「ぜ、全然って…(;^_^A」
いかに人外のレギウスとは言え、この程度のレベルの相手ならば自分でも楽勝と考えた佳代は余裕の表情を見せ全く動じる様子がない。事実、この後ピッグレギウスとグースレギウスは佳代にコテンパンにされてしまった。
「くっ…一体どうなってやがる……!」
「じゃ、アタシはもう行くから」
「ちょっと姉ちゃん」
「――えっ!?」
ちょっとした油断だった。背後からした高校生くらいの少年らしき声に反応してつい振り返った瞬間、顔に催眠スプレーを浴びせられた佳代は気を失ってしまった。
「んっ…んんん??(ここは…いったい?)」
気が付くと佳代は、見知らぬ場所で縛られていて、口には布で猿轡を噛まされていた。どうやらあの後ここに連れ去られて来たらしい。しばらくじっと冷静に周囲の様子を伺うが、どうやら自分以外にこの空間には誰もいないと察した佳代は、縄抜けの術でいとも簡単に手足の自由を取り戻した。
「さてと…茶碗を探さないと!」
口の猿轡も外して立ち上がった佳代は、まずは綾小路家の茶碗を探した。まさかあの時の騒ぎで茶碗が割れたりしていなければよいがと祈りつつも、あちこち探したが見つからない。外部に連絡を取ろうにも、スマホも案の定取り上げられていてどこにあるのか分からない。どうしたものかと佳代が途方に暮れていたところ、三バカが帰って来た。
「カメ、あの時はマジで助かったぜ。あの女とんでもなく強くてよぉ」
「よりにもよってレギウスが生身の人間に後れを取るなんてな」
「もうそれは言いっこなしだよ」
「それよりもあの女、これからどうするんだよ?」
「つい一緒に連れて来ちまったからなぁ…」
そして三バカは自力で縄を解いていた佳代とバッタリ遭遇!
「ああっ、おめぇ!!」
「いったいどうやって縄を解いた!?」
「ああ、思ったよりも緩かったから」
戻って来た三人組に怯える様子もなく、佳代はあっけらかんとした態度で答える。
慌てて目出し帽を被って顔を隠した(といっても佳代にはバッチシ見られている)三バカは、再度佳代を厳重に縛り直した。
「ちょっとぉ、別に抵抗も逃げたりもしないったら!」
「うるせぇ!大人しく静かにしろいッ!!」
三バカをボコボコにして返り討ちにすることなど自分の実力なら容易いが、茶碗を無事に奪い返すまでこの三バカから目を離すわけにはいかない。佳代は無抵抗のまま再び大人しく捕まるのであった。
コメント
お久しぶりです。早速三バカを活用いただきまして誠にありがとうございます。百戦錬磨のくノ一である佳代に見事に翻弄されている感がありありですね。
前半の口封じをしておきながらすぐに名乗りを上げてしまうというのは特撮モノではよくある展開ですが、それなりの強敵になりそうな存在には挨拶をしたくなるのが人情といったところでしょうか。
> お久しぶりです。早速三バカを活用いただきまして誠にありがとうございます。百戦錬磨のくノ一である佳代に見事に翻弄されている感がありありですね。
三バカの口調や言葉遣い等に違和感はございませんでしたでしょうか?
この後佳代は自力で縄抜けしながら何度も三バカに縛り直されるという展開を続けることになると思います(;^_^A
「乙女の危機」感は薄いと思いますが、たまにはこのような息抜き的な囚われ?シーンもよいかと。
何故三バカが鹿鳴茶碗に目を付けたのか?等の疑問については、今後の続きのストーリーで追々に…。
> 前半の口封じをしておきながらすぐに名乗りを上げてしまうというのは特撮モノではよくある展開ですが、それなりの強敵になりそうな存在には挨拶をしたくなるのが人情といったところでしょうか。
ちなみにピラニアレギウスは今回音声のみで自己紹介したものの、自分の正体が小西李苑だとは一言も触れておらず、また当然光平もピラニアレギウスの正体にまでは気づいておりません。優香もサイン会での一件は今ではすっかり忘れています。ピラニアレギウスの正体をあの場で唯一知っていたのが小西の部下だったクロウレギウスでしたが、それを喋る前に小西に口封じされてしまいました。光平たちがピラニアレギウスの正体に辿り着くのは、まだまだ当分先になりそうです。
>三バカの口調や言葉遣い等に違和感はございませんでしたでしょうか?
ハイ、全体としては特に問題はございません。ただ、タートルレギウス=亀田雄平は半端なヤンキーという設定ですので佳代に呼びかけるときは「お姉さん」というよりも「姉ちゃん」と言った方がそれらしい雰囲気にはなります。まあ重箱の隅ではありますが…。
>何故三バカが鹿鳴茶碗に目を付けたのか?等の疑問については、今後の続きのストーリーで追々に…。
ネタバレになるといけないので名指しは控えさせていただきますが、あのお方が糸を引いているなんてこともありそうな気がします…。
> ハイ、全体としては特に問題はございません。ただ、タートルレギウス=亀田雄平は半端なヤンキーという設定ですので佳代に呼びかけるときは「お姉さん」というよりも「姉ちゃん」と言った方がそれらしい雰囲気にはなります。
修正してみました。
> ネタバレになるといけないので名指しは控えさせていただきますが、あのお方が糸を引いているなんてこともありそうな気がします…。
黒幕はどうしようか実はこれから考えるつもりだったのですが、確かにあの老人が裏で糸を引いていてもよさそうですね(bakubond様と全然予想が違っていたらゴメンナサイ)。
ブレイブサクセッションのストーリー、楽しく読ませていただきました。
佳代ちゃん、生身の人間でレギウスを倒したのって何気に初じゃないでしょうかね。
稲垣岳玄が刀で光弾を跳ね返して怯ませたというのは前にありましたが、そういう敵の力を利用して自滅させるとかでなく普通に正面からぶつかって勝ってるのは歴史的快挙です!(と言うか三バカレギウスが弱すぎるんでしょうかね…)
DIDをこよなく愛する芸術家・ピラニアレギウスは私の本編よりもこちらのサイト様の方が水を得た魚という感じで生き生きと活躍できそうな気がするので、どんどんお使いいただければ本望です。
佳代がストファイの格ゲーキャラ並みに強いということと、三バカが怠惰な性格で真面目に鍛錬していないことが佳代圧勝の要因と思われます。もし三バカが真面目に戦闘訓練を積んでいたとしたら、さすがの佳代も危なかったでしょう。
小西李苑はじわじわと光平とその仲間たちを追い詰めてくれそうです。( ̄ー ̄)ニヤリ