シルカイ族の冒険　第5話

ワームホールに呑み込まれ、異世界タシェニュヴルアのアルスネス島へと漂着した中村弘樹は、そこでシルカイ族の若きリーダー・レイヴンと出会うが…。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

エリュナの正体

◆シルカイ族・アルスネス島――深夜の倉庫で◆

　夜。
　アルスネス島のシルカイ族の屯所は、深い闇と静寂にすっぽりと包まれていた。
　外では穏やかな波が砂浜を撫で、木々が風に揺れる音だけが微かに響く。

　だが、ひっそりと佇む倉庫の中では――密かに異様な気配が動いていた。

　月光を避けるように忍び込んだひとつの影。
　焚き火の匂いを含んだ外気とは違い、倉庫の中はひんやりと静まりかえっている。

　その影――白のローブを身にまとった女神官・エリュナが、積み上げられた木箱の間をかき分けるように何かを探し回っていた。

「……チッ……どこに隠してあるのさ……！？
　どいつもこいつも厳重にしまい込みやがって……！」

　普段の清廉な声色とはまるで違う。
　焦りと苛立ちを抑えきれない低い呟き。
　その手はわずかに震え、額には冷や汗がにじんでいた。

　探し物――それは分かっていた。
　昼間、異世界の少年・弘樹と会話する際に使われた、あの翻訳機のブレスレット。

　そして、ついに――。

　倉庫の暗闇を、突然、強い灯りが裂いた。

「……探しているのは、これか？」

　低く静かな声。
　灯りの向こうから現れた影を見て、エリュナの血の気が一気に引いた。

　レイヴン。

　シルカイ族の若き族長代理であり、いま最もゲロム一家にとって厄介な存在。

　その手には、エリュナが探していたはずのブレスレットが握られていた。

「あっ……れ、レイヴン……さん……？
　さ、さあ……私には、いったい何のことやら……💦」

　震えた声は取り繕うように優しいが、もはや意味がなかった。

「……諦めろ。
　お前の正体はとっくにバレている」

　その言葉に、エリュナの表情が完全に崩れた。
　観念したように肩の力を抜くと、彼女は舌打ちをひとつ鳴らし、今までの敬虔な仮面を投げ捨てた。

「ちきしょうっ、ドジ踏んじまったよ！
　……で？　いつからアタイが怪しいって気づいてたんだい？」

　口調は乱暴で、眼つきも鋭く変わっていた。
　――これが本性だ。

　レイヴンは灯りを少し近づけながら、淡々と答える。

「俺たちは海賊に捕まった“神官の娘”を、何人も救ってきた。
　だから分かる。
　本当の神官は、あんなふうに動じない。
　あの目は……嘘をつき慣れた者の目だった。」

　エリュナは目を見開き、苦笑した。

「へぇ……さすがだね、レイヴン。
　生意気な若造のくせに、よく見てやがる……！」

「お前を拾ったときに見せた“涙”も不自然だった。
　それに――慈神アレイナに仕える敬虔な聖職者なら、毎日夕刻に日が沈む方向に向かって礼拝は欠かさない筈だ。神官に化けるなら、ちっとは教義くらいは勉強しとくべきだったな」

「げっ……そんな細けぇとこ見てたのかい！？」

「お前みたいな猿芝居は、俺たちには通用しないってことだ」

　エリュナは舌打ちし、後ずさった。

「……だけどねぇ、アタイはそう簡単には捕まらないよ！」

　言い終わるが早いか、彼女は豹のような素早さでレイヴンに体当たりした。

「っ！」

　衝撃でレイヴンが一歩よろけた瞬間、エリュナは倉庫の出口へ飛び出した。

◆

「待ちなさい！！」

　外。
　走り抜けようとしたエリュナの前に立ちはだかったのは、シルカイ族の女戦士――セリーナ。

　月光を浴びた蒼い髪が、夜風に揺れた。

「逃がさないわよ！」

　その声に怒りを滲ませ、エリュナは歯ぎしりをした。

「クソッ……！」

　後方から追いついたレイヴンが剣の柄を握りしめる。

「観念しろ、エリュナ！」

「言われて従うタマじゃないっての……！」

　エリュナは別の方向へ走り出し、レイヴンとセリーナがすぐに追う。

　そして――。

「いったい何の騒ぎなんだ……？」

　騒動に気づき、弘樹が寝巻き姿から普段の服に着替えて駆け寄ってきた。

　エリュナの目がギラリと光った。

「ちょうどいい……！
　小僧、アンタを人質に取らせてもらうよ！！」

　エリュナは隠していた細身のナイフを抜き、そのまま弘樹に飛びかかった。

「うわああっ！？」

「危ない！！」

　瞬間、セリーナは弘樹に向かって体当たりした。
　鋭い刃は、弘樹のすぐ横を掠める。

　だが次の瞬間――。

「へへ……捕まえたよ、お嬢ちゃん。この際人質はアンタでもいっか♪」

　セリーナの首元にナイフが押し当てられていた。

「っ……！」

　弘樹は尻もちをついたまま、凍りついた表情で二人を見つめる。

「動くんじゃないよ！
　妙な真似したら、この娘この命は――ないよ！」

「無駄だ、エリュナ……！
　もう逃げ場なんてないぞ――」

「ふふん……さあ、そいつはどうかねぇ？」

　エリュナはセリーナを引きずるようにして後退りし、
　すぐ近くにあった小さな木造の小屋へと潜り込む。

　そして――。

　バタンッ！

　扉を閉め、内側から錠をかける音が響いた。

　――こうして、エリュナはセリーナを人質に取り、
　小屋に立て籠もる籠城戦へと突入したのだった。

籠城

◆シルカイ族屯所・小屋の中――静かなる人質劇◆

　小屋の中は、湿った木の匂いと、重たい沈黙が満ちていた。
　灯りひとつない薄闇の中、縄の擦れる小さな音だけが響く。

　セリーナは両手を後ろ手に縛られており、粗い麻縄が手首に食い込んでいた。
　それでも背筋を伸ばし、気丈にエリュナを睨みつけている。

「……こんなことをしたって無駄よ。
　もうあなたは逃げられないわ」

　エリュナは壁に凭れ、ナイフを弄びながら不敵に笑った。

「黙んな！
　可愛い妹が人質に取られてんだ。
　アンタの兄貴――レイヴンだって、そう簡単には手出しできないさ。
　フフフ……こりゃあ交渉のカードとしては十分すぎるよ」

　セリーナは唇を噛んだ。
　だが怯える様子はない。

「……兄さんは、あなたが思っているほど甘くはないわ」

「へぇ、強がるねぇ。
　でもね――強がりがどこまで通用するか、見ものだね」

　小屋の外からは、戦士たちの足音がじわじわと四方を固めていく気配が伝わってくる。
　しかしエリュナは怯まない。
　むしろその包囲の音に、エリュナの不敵な笑みはさらに深くなった。

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◆外――レイヴンたちの包囲網

　小屋の外では、レイヴンを中心にシルカイ族の戦士たちが完全包囲を敷いていた。
　月光の下、武器が静かにきらめく。

　その緊迫の中央で、ただひとり焦りを隠せず動き回る少年がいた。

　――弘樹だった。

「セリーナさんは……僕を庇って捕まったんだ！
　僕にも……僕にも何か手伝わせてよ！」

　声は震え、拳は強く握りしめられている。

　だがレイヴンは厳しい表情で首を振った。

「……気持ちはありがたいけどな。
　素人が手を出すと、かえって危険が増える」

「で、でも……！」

「今は待て。
　お前を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
　ここは俺たちに任せろ」

　その言葉は優しい。しかし弘樹には――刺すほどに悔しかった。

（結局……僕には何もできないのか……
　あのときも、今回も……守られてばかりで……）

　唇を噛んだ瞬間だった。

　――空気が裂けるバチバチッという異音が発生した。

　空がねじれ、光が渦を巻く。

「！？　時空の……裂け目……？」

「距離を取れッ！！」

　レイヴンが仲間たちに警戒態勢を取らせる。
　だが弘樹は、耳に覚えのある「重低音」に気づいていた。

（まさか……この音……！）

　強烈な光柱の中から、巨大な影がゆっくりと降りてくる。

　一機……
　二機……
　三機……！

　金属の巨躯が大地を震わせながら着地した。

　AE-78X アクアライザー
　XZ-5000 ブルーファントム
　COSMOS-008 フェアリーライト

　その姿を見た瞬間――弘樹の表情が爆発するように輝いた。

「みんな……！　本当に……！？」

　レイヴンたちが武器を構えかけるが、それを制するように弘樹が手を振った。

「違う！　レイヴンさん、みんな！
　彼らは――味方だよ！！」

　その言葉にシルカイ族の兵たちの警戒が少し緩み、
　やがてアクアライザーのコックピットが開いた。

　青白い光がこぼれ、そこから一人の少年が飛び降りてくる。

「弘樹ッ！！
　無事だったか！？」

「拓斗くん！！」

　弘樹はこらえきれず、駆け寄った。
　仲間の姿を前に、目頭が熱くなる。

　拓斗は肩を掴み、ぐっと引き寄せた。

「心配させやがって……！
　遅くなって悪かった！」

「ううん……来てくれて……ありがとう……！」

　その後方では、ブルーファントムから俊彦が、フェアリーライトからレイラが降り立ち、
　シルカイ族の戦士たちはその異質な光景にただ目を見張る。

　こうして――
　異世界に迷い込んだ弘樹は、ついに仲間たちと再会を果たした。

（つづく）

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