安土市内で失踪した大学生、草川律希と桐尾史奈の捜索・救出作戦を命じられた獅場俊一と寺瀬詩郎の二人は、地球連邦軍オメガ・ヴェール基地にあるディオドスシステムを使って、セレスティア=スパークル少尉(セリィ)と共に異世界タシェニュヴルアへと渡り、そこでグランベルミア王国の女騎士リュシエル・アストレア=ヴァン=グレイヴの協力を得る。
地球から新たに合流して来た笹南侑衣梨に発信器を持たせたうえでわざと敵に捕らえさせ、その発信器を頼りに位置を割り出した敵本拠地へと乗り込む俊一と詩郎だったが…。
律希救出
暗黒魔城の回廊は、冷え切った石造りの壁が延々と続き、いたるところに怪しい燭台の炎が揺れていた。
その中を、轟音と共に突き進む二つの獣の影。
サーベルタイガーレギウスとライオンレギウス――二人は迫りくる黒騎士の群れを蹴散らし、血煙をあげることなくただ鋼の衝突音だけを響かせて、縦横無尽に暴れ回っていた。
剣を構えた騎士たちは次々と斬り伏せられ、残骸のように床に崩れ落ちていく。
「俊一! 監獄の方に人の気配がある!」
サーベルタイガーレギウスが低く唸るような声で言った。
「了解した、行こう!」
ライオンレギウスは頷き、二人は巨壁を破りながら奥へと駆けていく。
やがて辿り着いたのは、重苦しい鉄の扉が幾重にも並ぶ監獄区画だった。そこは冷気と鉄錆の臭いが充満し、呻き声が反響していた。
ライオンレギウスは一つの牢に目を止めた。
「……あれは!」

狭い牢獄の奥、鎖で縛られ口枷をはめられた青年がいた。暗がりの中でも、その面差しは写真で見た人物と一致していた。
――草川律希。
「草川律希さんですか?」
ライオンレギウスが声をかける。
「んんっ!! んんっ!!」
律希は必死に首を縦に振り、肯定の意思を示す。
「ブレイバーズです。助けに来ました」
その言葉に、律希の瞳に安堵の色が灯る。
「ちょっと待ってろ」
サーベルタイガーレギウスは一歩前へ踏み込み、鉄格子に両手をかけた。
鋼鉄がきしみ、石床に響く衝撃音。猛獣の咆哮のような力でこじ開けられた鉄格子が歪み、ついに千切れて崩れ落ちた。
鎖を断ち切られ、口枷を外された律希は肩で息をしながら、深々と頭を下げた。
「助かりました。ありがとうございます」
「桐尾史奈さんは一緒じゃないんですか?」
ライオンレギウスが問う。
律希は息を整えながら答えた。
「彼女は多分、この城の女王のところにいます! 一度そこに連れて行かれたことがあるんで案内しますよ!」
三人の視線が交わる。
サーベルタイガーレギウスの双眸には闘志が燃え、ライオンレギウスの瞳には仲間を取り戻す決意が宿っていた。
「よし――行こう」
こうして二人のレギウスと律希は、暗黒魔城の最奥――女王モルガナ=ナグサリアが待ち構える女王の間へと向かって進撃を開始した。
――彼らの足音は、石の回廊に鳴り響き、やがて玉座の間へ至る戦いの予兆を告げていた。
モルガナとの対峙
玉座の間――。
重厚な扉を押し開け、ライオンレギウス、サーベルタイガーレギウス、そして草川律希が踏み込むと、広大な大理石の床と高い天井に冷たい空気が満ちていた。燭台の炎は不気味に揺れ、奥の高壇に置かれた玉座には、女王が悠然と腰掛けていた。
黒紫の衣をまとい、瞳に妖しく光を宿した女王モルガナ=ナグサリアは、来訪者たちを待ち構えていたかのように薄く笑む。
「よく来たな。異世界の戦士たちよ。お前たちが来るのを待っていたぞ」
その声音には余裕と挑発が滲んでいた。
「護衛が一人もいないとは、いい度胸だな?」
サーベルタイガーレギウスが牙のような声で低く吠える。
一方で律希は、憤りを抑えきれず一歩前に出た。
「史奈先輩はどこだ!? 早く彼女を解放しろ!」
モルガナは口角を吊り上げ、余裕たっぷりに指を鳴らす。
「そう慌てるでない」
その瞬間、玉座脇の大扉が重々しい音を立てて開いた。外の光が差し込み、視界の先に現れたのは城の庭――。
「史奈先輩!!」
「侑衣梨さん!?」

背景は、Stable Diffusion Onlineで生成しました。
丘の上に並ぶ二本の石柱に、桐尾史奈と笹南侑衣梨の姿があった。口には猿轡を噛まされ鎖で縛られ、逃げる術もなく苦悶の表情を浮かべている。
「んんーっ!!んんーっ!!」
「んむぐぐーっ!! んんむぅ~んっっ!!」
だが、さらに恐ろしいものが二人へ迫っていた。

影を覆う巨大な蜘蛛の魔物――ジャイアントスパイダー。無数の脚が芝生の地面を叩く音が、遠雷のように響き渡る。その牙が光を反射し、今にも犠牲者を貪ろうと唸っていた。
「ぐずぐずしていると、あの娘たちはジャイアントスパイダーに餌食になってしまうかものぅ…」
モルガナの声は、残酷な遊戯を楽しむ支配者そのものだった。
「くそっ! そうはさせるか! 行くぞ詩郎!」
ライオンレギウスの咆哮が広間に響く。
「おう!」
サーベルタイガーレギウスが応じ、二人の戦士は同時に駆け出した。
大扉を突き抜け、庭へと飛び出す。黒雲の下、石柱に囚われた少女たちを目指して、獣たちの疾走が始まった――。
(つづく)
コメント
暗黒魔城カチコミをかけ、その流れで無事律希くんを救出した詩郎くんと俊一くん、律希くんに案内され謁見の間に、そこに待ち構えていたのはラスボス女王モルガナ!!
>「よく来たな。異世界の戦士たちよ。お前たちが来るのを待っていたぞ」
モルガナさん何だか余裕な感じ、よく見ると護衛もいない。
まるでRPGゲームのラスボスのごとく多対一で戦うつもりなのか…!?
…って思ったら、玉座脇の大扉が開き、見えたのは外の庭の丘の上、そこには後手に鎖で縛られ猿轡をされた史奈さんと侑衣梨ちゃん、最後に連縛が見れて良かったです、ここでセリィちゃんも加わってくれればなお嬉しかったのですが、それは流石に贅沢ですね。
さて、縛られた美女達に迫るものが、それはとてつもなく大きいジャイアントスパイダー、その様を見ながら悦に浸る女王モルガナ、こいつにとっては異世界人襲撃も余興の1つなのだろうか?
とりあえず蜘蛛をなんとかすることですが、詩郎くんと俊一くんが戦っているのをただ眺めて楽しむだけなのか、それとも何か企んでるのか、このBBAの考えが読めませんね。
そういえば、七香ちゃんと絵里花ちゃんと佳菜ちゃんの後輩キャラも作りたいと思っているのですが、大丈夫でしょうか?
> そういえば、七香ちゃんと絵里花ちゃんと佳菜ちゃんの後輩キャラも作りたいと思っているのですが、大丈夫でしょうか?
是非お願いします!m(_ _)m
後輩ちゃんも全員女子生徒かな…?
物珍しく見える筒タイプの口枷ですね。
ジャイアントスパイダー・・・なんとなくクモ〇ガと言いたく・・・
> 物珍しく見える筒タイプの口枷ですね。
「バーギャグ」って言うらしいですね。
実際の写真から切り抜いて使ってます。