脱獄犯との対決　第4話

両親の留守中に自宅で一人で留守番をしていた女子大生の天帆美空は、その日の夜、脱獄犯の剛田克己と大石啄夫に強盗に押し入られる。幸いにして大した怪我もなく助かった美空だったが、今も脱獄犯は逃げ続けており、このままでは腹の虫が収まらない。そんな時、美空は早朝のジョギング中に脱獄犯の片割れ・大石が廃工場の中に入る現場を目撃した！　たまたま近くを通りかかった幼馴染で同じ大学に通う織市奏陽をも巻き込んで、即席の素人探偵コンビは廃墟の中へと潜入し、大石を警察に逮捕させることに成功したのだが…。

要求

「んぐっ、んむむぅっ！」
「んむむぅっ!!…んんむぅぅっ!!」

突如、今も逃げ延びている脱獄犯の剛田克己によって大学からの帰宅途中に誘拐された天帆美空と星愛怜美花は、某所の地下室に監禁されていた。
奏陽くんの言ったとおりだった。自分の軽率な行動で、大切な親友の怜美花まで危険に巻き込んでしまった。自分勝手な正義感と好奇心で周囲を振り回したことを、今更ながらに激しく後悔して涙する美空。そんな美空を見つめる怜美花の視線は、まるで「自分を責めないで。美空は決して何も悪くないよ」と慰めているように感じる。それが余計に美空にとっては辛かった。かくなる上は自分はどうなってもいい。だから神様、怜美花だけは…怜美花だけは助けてください！…懸命な気持ちで祈る美空であった。

一方、隣の部屋では、剛田が組の舎弟であるテツと謀議を進めていた。美空を誘拐したのは弟分の大石啄夫が警察に捕まった事へのお礼参りも勿論あるが、その真の目的は、美空と怜美花を人質にして警察に大石の釈放を迫る目的もあったのである。

「もしもし署長さんよぉ～、こちらは可愛いお嬢さんの身柄を二人も預かっているんだ。人命は地球よりも重いんだろ？　なら人質は大石の身柄と交換だ。取引場所と時間は後でまた連絡する」

警察署長に脅迫電話をかけ、一方的に携帯の通話を切る剛田に、テツが話しかける。

「しかし意外ッスねぇ。剛田さんがわざわざ大石さんを助けようとするなんて。てっきり見捨てるものかと思ってましたよ」
「バカヤロウww　俺がそんな仲間思いな男に見えるか？　大石は奴と俺が二人してサツに捕まってムショにぶち込まれる前にどこかに隠した、宝石店から強奪した数億円相当のお宝の隠し場所を知っているんだ。それがあの野郎、隠し場所を俺に教える前にあんな小娘のせいでサツに捕まってムショに逆戻りだなんてドジ踏みやがって…」
「なるほど…そういうことだったんッスねぇ。なんか納得しました」
「お宝さえ聞き出しちまえば、もう大石の野郎も用済みだ。その時はテツ、お前と二人で宝石は山分けと行こうじゃねえか♪」
「へい！ ありがとうごぜいやす！　さっすが剛田さん太っ腹！　いよっ！　日本一！！」

取引

「言われた通りに一人で来たわ。姿を見せなさい！」

鷹松優姫刑事が一人でパトカーを運転し、大石を連行して来た。どうやら警察は剛田の要求に応じることにしたようだ。するとそれを確認した剛田とテツの2人も姿を現す。

「剛田の兄貴、助けに来てくれてうれしいぜ！」
「おお！　さあ、早く剛田の手錠を外してこちらに寄越せ！」
「人質の女の子を解放するのが先よ！　女の子たちの無事な姿を見せなさい！」
「あいにくだが人質はこの場に連れて来ちゃいねえ。ご不満なら今回の取引はご破算にしてもいいんだぜ！」
「くっ、分かったわ！」

渋々優姫は大石の両手から手錠を外した。

「よしっ、じゃあその外した手錠を、今度はその女刑事さんの両手に後ろ手に掛けるんだ。女刑事さんよぉー、約束通り人質の無事な姿を見せてやるぜ。黙ってついて来るんだなww」

裏切り

後ろ手に手錠をかけられたまま剛田たちの車に乗せられ、彼らのアジトに連れて来られたものの、椅子に縛り付けられた状態で一室に閉じ込められ、一向に人質の無事な姿を見せてもらえない優姫。これも想定の範囲内とはいえ、やはり時間が経つにつれて優姫の表情からは焦りと不安の色は強くなっていった。

そこへ大石が灯油缶を持って現れた。大石は優姫の周りに油をまいて行く。

「女刑事さん、気の毒だけどアンタには〇んでもらうぜ」
「待って、その前に教えなさい！　天帆美空さんと星愛怜美花さんはどうしたの！？」
「いいだろう。どうせ〇ぬんだ。冥途の土産に教えてやろう。明日、俺がムショにぶち込まれる前に隠したお宝を取りに向かうんだ。そこで仲間とお宝を仲良く山分けした後で、俺たちはめでたく海外に高飛びだ。その際にお嬢ちゃんたちも一緒に海外に連れて行って現地で売り飛ばそうって寸法よ！」
「なんて卑劣な奴らなの！」
「出来れば女刑事さんとはイッパツやりたかったんだが、時間もないみたいだし残念だよ。ホント勿体ないよなぁ…。でも兄貴の命令だから仕方がない。まあせいぜい念仏でも唱えながら往生してくれ。アバよ」

マッチに火をつけて床にポイっと捨てた大石は、すぐにドアを開けて立ち去ろうとしたのだが……

「…あ、あれっ!?　開かない!! いったいどうなってやがるんだ！」

まるで外から鍵でも掛けられたようにドアがビクともせず、焦る大石。そうしている間に火は瞬く間に部屋中に広がってしまった！

「ちきしょー！ 剛田の野郎！ 俺を裏切りやがったなー!!💦💦　おーい兄貴！　開けろー！！　この俺を見捨てるのか―！？」
「ちょっと落ち着きなさい大石！」
「うるせー！ もう何もかもオシマイだー！！」

果たして火に包まれた優姫と大石の運命は！？

つづく。